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デッドエンド
官能リレー小説 - ファンタジー系

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デッドエンド 145

顔が赤くなっていくのを、私ははっきり自覚していた。
「え…と、リオン」
「ん?」
「その…これ、」
「これ?」
「私…に?」
レネーが呆れ顔になったことに、私は気付かなかった。
リオンは当然のように頷いた。
「クリスにあげます。お守りです」
「でも、」
「それくらいなら、邪魔にならないでしょ?」
「そうだけど…」
すっかりうろたえてしまっていた。
男から物を贈られたことが、全くないわけではない。
大概の人間にとって、13は味方につける価値がある。私は女だから、味方につける手段の一つとして、誘惑しようとする男はときおり現れた。
だが、それらにこんなに動揺はしなかった。こんなに…うれしくなど、なかった。

「お前も、似合うと思うだろ?」
まともに反応できないでいるのを、耳飾りが気にくわないからだと誤解したのだろう。リオンは頬から手を離すと、レネーに振った。
レネーは、やけに真剣に私の顔を眺めてから頷いた。
「うん。似合ってる」
「レネー…別に無理に誉めなくてもいいんだぞ」
「無理してないよ。クリスってわりと派手な顔だし、飾りはそれくらいがちょうどいい」
「派手…」
あまり誉められている気がしない。
複雑な気持ちでいると、リオンがのぞきこんできた。
「気に入りませんか?」
彼はまたしても眉を寄せて、不安げな表情をしていた。私はうっと呻いた。
この顔だ。こんな顔で問われたら、答えは一つしか用意されていない。
絶対わざとやっている。そう思いながらも、私はその答えを口にするしかなかった。
「…気に入った。その…ありがとう、リオン」

といっても、別に嘘をつく必要はなかった。
ただ何というのか、少し情けないような気分だったのだ。
心を乱されたくない、そう再確認したばかりだった。その数分後にこのざまだ。
こちらの心中など知る由もなく、リオンは破顔した。
「お礼なんていいですよ。あ、でもどうせお礼してくれるなら今夜にでも…」
またバカなことを言おうとしたのだろう。内容は想像がつく。
だが予想して拳を握るより先に、レネーがぼそりと低く、だがはっきりとこう言った。
「なんだ、金持ってんじゃん」

やりとりを遮られて、私はリオンと二人して少年に向き直った。
「朔月の給料振り込みが遅れてて、金ないって言うから、支払い待ってやったのに」
リオンのことだろう。彼は意味がわからないとでもいう風に眉をひそめていた。
レネーはかまわず続ける。
「っていうか、考えてみりゃリオンもカナンで報酬もらってんだよね」
何で気付かなかったんだろ、とレネーはぼやくように呟いた。
話が全く見えない。
「レネー? 何の話…」
問い質そうとした私を遮って、レネーはリオンに向かって言った。
「昨日の薬代も払ってよ」
「薬?」

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