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おてんば姫、ファニーの冒険
官能リレー小説 - ファンタジー系

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おてんば姫、ファニーの冒険 62

そのまま顔を枕に押しつけて泣き崩れる。
先ほどまでの昂揚した気持ちも、すでに冷め切っていた。
「ライズ、どうしてなの、どうして・・・」
ファニーはほとんど泣かない娘だった。
感情を爆発させて怒鳴ることがあっても、決して人前で涙を見せなかった。
それはヘンドリック王を厳しくも慈悲あふれる教育のたまものだった。
普通の王室の子なら、子女の教育など家臣任せだが、ヘンドリック王は、時間が許す限りファニーと一緒にいる時間を作った。
時には自らの手で、剣術の稽古をつけることもあった。
それによってファニーは、王の愛を強く自覚し、そのため心底悲しいと感じることはなかった。

しかし今はとても悲しかった。
心が張り裂けるほど悲しかった。
そのまま夜通し泣き続け、ようやく夜明け近くにまどろむことができた。


翌日の獣人達との別れはあまり良いものではなかった。
ファニーの目は明らかに赤く腫れている。 泣いたためである。
そのわけを獣人達もアンナも解らず、そのため皆ぎこちなく笑いながらのお別れとなった。

「姫様、何かあったのですか?」
アンナが心配そうに聞いても、ファニーは、なんでもない、としか答えなかった。
帰路も険悪な雰囲気のまま、ファニー達は王都に到着した。
「姫様! よくぞご無事で!」
ティーエと重臣達が帰ってきたファニー達を出迎えた。
「ティーエ、ただいま。
はい、これがボッキ茸よ。 お父様に。
私、部屋にいるから。」

ティーエにボッキ茸を渡すとファニーは一人、城へ駆け出した。
残されたティーエと重臣達は呆気に取られて走り行くファニーを見つめている。
「アンナ…姫様はどうかしたのか?」
ティーエが問う。
「それが…私にもさっぱりで…」
ファニーより幾分年嵩で学の有るアンナだったが、恋愛方面には経験値が足りず、鈍かった。
「どんな心境の変化が有ったんすかね?」
流石のライズもまさか姫が自分を気にしているとは思えず、鈍かった。

早々に城に着いたファニーは門を入ってすぐ、父王の乳兄妹であり侍女長のフリッカに会った。
「姫様、お戻りになられたのですね! お帰りなさいませ」
「た、ただいま…フリッカ」
ファニーはわずかに戸惑う。なんとなくフリッカには今一番会いたくなかった。
「無事ボッキ茸は手に入ったわ。私は部屋に戻るからお父様をよろしく」
それだけ言うとファニーは行ってしまった。
その背中を見送ったフリッカは明らかに姫様の様子がおかしいと感じた。
聡明な彼女はすぐに旅先で何かあったに違いないと思い至る。
と、そこにティーエとアンナとライズ、その他家来達が戻った。
「フリッカ殿、これがボッキ茸です。早速頼みます」
ティーエはフリッカに茸の袋を手渡した。
頼むというのは王への茸の服用と副作用の処理である。
そこに家来の一人が口を挟む。
「あの…ここ数日、王の意識が無いのですよ。どうやって食べさせればいいのやら…」
「そこは童話を真似しましょう。手間も省けます」
とティーエは答えた。つまりは口移しである。

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