朝、目が覚めると……… 11
「そうよね・・・昔から仲良しだったんだもの。気持ちは私たちと同じよね!」
・・・物分り良すぎです、飛鳥さん。
「私たち、住んでも良いんですの?」
「空いてる部屋はあるけど、二人で一部屋でいいかしら?」
「もちろんです!ありがとうございます、お姉さま!」
・・・家主を放置で決定ですか。
「じゃ、部屋を片付けてくるわね」
そう言って、少々不満そうな真由を連れて階段を上っていく。
「ん?どうした帝?何か言いたそうだけど」
にやっと笑いながらそんなことをほざく蓮。
「・・・お前らは詐欺師か」
「何のことかしら?」
留奈が真顔でそんな返答を返す。
「よくもまあ・・・うまく丸め込んだな」
思わずため息をついてしまう。
「別に・・・嘘はついてませんし」
「へ?」
十分間を取ったにもかかわらずそんな声が漏れた。
「私たちだって・・・それなりに心配してるんだよ」
「な、何をだよ・・・それって・・・」
いきなりそんな事を言われても・・・って、おいおい蓮の奴、何乙女チックしているんだよ!調子狂うなぁ。
「・・・帝・・・あのね・・・」
俺の前に座っていた蓮が、思わず立ち上がると、直ぐ横に座った。そして横から囁くくらい顔を近づけてくる。
「お、おい蓮・・・な、何を・・・」
実体化しているので心臓の動きがドキドキする。
こ、これって・・・
「最初にわたくしたちに会いに来てくれて・・・本当にうれしかったんですわよ?」
振り返ればいつの間にか蓮とは反対側に留奈が座っていた。
「なのに出て行ったきりなかなか戻ってこないし、電話が来たと思ったらこのうちに住むって」
言いながら蓮が腕を絡めてくる。
「もっと色々・・・話したい事とかありましたのに」
留奈も腕を絡めて上目遣いで見上げてくる。
・・・怒ったときは怖かったが、いつにも恐怖を感じたのはそのためか。
「振り回したのは、悪かったと思ってるよ。ごめん」
幽霊になって居場所のなかった俺に、ここに住めと言ってくれたのに。
「ううん。いいのですわ・・・」
上目遣いで見上げてくる留奈に少し戸惑う。まいったな・・・こんな所
真由に見られたら・・・
困惑する帝に対して見ている目があった。
それは黒いフードを深く被ったかなり怪しい人物であるが、何故か一度会ったような
気がする。
「やれやれ。こんな奴の担当しなくちゃいけないなんて・・・はぁ、憂鬱だわ」
鈴のように綺麗な声の主は、被っていた分厚いフードを脱ぐと、腰まで届く
長い髪をすーっと手でかきあげていた。
「まったく。なんだってあたしに・・・もぉ!」
帝が最初に会った女死神とは別人のようだが、帝自身は彼女に気が付いていない。
整った顔が少し不機嫌になる。
「ま、実体化しているからあたしの姿は見えてないしぃ、もう少し観察してみようかな」
サクランボのような唇でひとりごちしながら、女死神は自ら長いローブを脱ぎ捨て、
胸元が大きく開いたセクシーな黒のドレス姿になっていた。
「な、なぁ・・・蓮、もうちょっと離れてくれないか?留奈もさぁ・・・」
俺は体を揺すりながら二人から離れようとするが、腕を絡められて動けない。
正直居心地が悪い。飛鳥さんや真由に見られたら誤解されそう。
「どうしてですの?私も蓮も帝の事を思っているのに・・・」
「あ、いや・・・それは・・・」
留奈の奴、目が笑っている。・・・・言っている事は本気なのか?