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もう一度彼女が行くところ
官能リレー小説 - アブノーマル

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もう一度彼女が行くところ 1

第1部 『オカエリナサイ』

 その日も、残酷なまでの熱波が日本中を覆っていた…。
 ここは南青山。うだるような暑さの中、大きなアタッシュケースを抱えた一人の男が表参道駅に降り立った。
 男の名前は樫村亮太(かしむら・りょうた)。28歳。190cm近い巨漢で、肥満気味の体型は『分厚い肉の塊』を思わせる。
 亮太は汗を拭きながら表参道駅近くの都市銀行へと入っていった。

 15分後。
 HMJ銀行表参道支店に勤める姫宮葵(ひめみや・あおい)は、支店長から直々に呼び出された。
 葵は25歳。関西の大学を卒業後、単身上京し、この銀行に勤めて既に3年になる。
 スラリとした長身に長い黒髪。この支店ナンバーワンの美貌で仕事もよくこなしている。
「支店長、お呼びでしょうか?」
「姫宮くん…。君、これから応接室でお客様の接待をしてくれないかね?」
「はい。でも…。何故私が?」
「お客様直々のご指名だよ。君でないと契約しないと言うんだよ。何しろ不景気の昨今、1500万円という大口の預金客だからね。くれぐれも粗相のないように!」
(お客様のご指名って…。一体何なのよ? 私はキャバクラ嬢じゃないんだから!)
 華麗なルックスに反して控えめな性格の葵はこうした接待に駆り出されるのを疎ましく思っていたが、支店長の命令であれば仕方ないと諦めた。
 葵は自分のデスクに戻り、契約に必要な書類をまとめると、早足で応接室へと向かった。

 コン、コン…。
 葵が応接室のドアをノックすると、向こうから応える声がする。
「どうぞ」
「お待たせいたしました、お客様。私、当支店の担当で姫宮葵と申します…」
 葵は客の前で簡単な自己紹介をすると頭を下げようとした。しかし、客の顔を見た葵の表情は一瞬こわばり、そのまま固まってしまう。
「…久し振りだなぁ、葵。俺だよ」
「あ、あなたは…。亮太…様…」
 そう。かつて2人は恋人同士だった。
 いや、その表現は必ずしも適切ではない。『恋人同士』と言うよりも『ご主人様と奴隷』の関係であった。

 そのいきさつはこうだ。
 7年ほど前、関西のとある名門私立大学に入学した葵は、そこで3年先輩の亮太と出会った。
 箱入り娘のお嬢様だった葵は新入生歓迎コンパで何もわからないまま強い酒を大量に飲まされ、意識を失ったところを亮太にラブホテルに連れ込まれたのだ。
 野獣のような亮太の毒牙にかけられ、葵はレイプされた。
 葵は処女だった。そのまま一晩中犯され続け、意識を取り戻した時には素っ裸されたままベッドの上で亮太に身体中舐め回されていたのだった。
 自分のはしたない姿と亮太の凄まじい目つきに葵は悲鳴を上げた…。

 以来、周囲から表向きは『樫村先輩の彼女』という扱いを受けて大学時代の4年間を過ごしたが、内実はSMマニアである亮太に牝奴隷としての調教を受け続けた。
 亮太の執念深く猜疑心の強い性格や、常軌を逸した独占欲、そして日に日にエスカレートしていく変態プレイ。恐怖感と罪悪感にかられた葵は大学卒業寸前に亮太の前から姿を消した。
 そして単身上京、東京で就職していたのである。

 亮太の恐ろしさは骨身にしみてわかっている。
 ヘビに睨まれたカエルと同じで、葵は身動きがとれなくなり、その場で立ち尽くしたままガタガタと震えだした。
 葵の手からドサドサ…ッ!と書類が落ちる。
「はははっ。何をそんなに震えているんだ? 今日は客として来たんだ。早く契約書類を作ってくれよ」
 にこやかに笑う亮太。しかし、目だけは笑っていない。射すくめるような目が葵の全身を舐め回している。
「は、はい。大変失礼いたしました…。では、さっそくお作りいたします」
 顔面蒼白の葵はやっとの思いで言葉を搾り出すと、亮太の前の応接セットに腰をかけた。
 そこから先は、よく覚えていない。葵の心は不安と恐怖で一杯になった。
(この人、何を考えているのかしら…?)
 下を向き、できるだけ目線を合わせないようにしながらどうにかこうにか契約書類を作り終えると早々に立ち去ろうとする。
「今回はどうもありがとうございました。それでは失礼しま…」
「待てよ! せっかく久しぶりに会えたんだ。少し世間話でもしようぜ? 葵…」
 亮太の巨大な手が葵の腕をがっちりと掴んだ。
 ぬるぬると脂ぎった熱い手だ。腕を掴まれた途端、葵の身体に電気が走る。
 葵はそのまま抱きすくめられてしまう。自分はこの腕の中で何度果てたのだろう?

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