闇夜 1
狭い部屋に立つ、一匹の男。
彼はミノタウロスのような屈強な肉体美を誇り、その黒い瞳には、闘争心と執念が宿っているように見える。
彼の名はゴウ・アイアン。元々は警察官だったが、ある事件をきっかけに私立探偵に転職し、悪事を暴くために闘い続けている。
ゴウは倉庫を改築した安アパートを出ると、艶の消された黒い革コートを羽織り、夜の闇へと潜っていく。
今現在彼が受けている依頼は、裏で中毒性の高い麻薬を売り広めているバーの調査だった。
真面目で厳格そうな依頼人は、どこか疲れはてた空気を漂わせていた。
少し距離がありつつも普通の家族だった娘が、そのバーでクスリに囚われてしまったらしい。
初めは友人たちとちょっとした冒険心でバーに訪れ、悪そうだが楽しい男たちと意気投合した。
酒でガードが甘くなり、タバコよりも手軽で面白いとタブレットを薦められたのだ。
「お前さんが持ち込んだ女児の尿だが、やはりダーク・ナイトじゃったよ」
俺は、依頼者に体調不良を理由に尿検査きっとを依頼した。
危険ドラックの中には警察の違法薬物指定に入っていないいわゆる脱法ドラックもある。
中には故意に指定薬物に入れていないものも多い。
ダークナイトもその一つだ。
精液バイナリー型 覚せい剤 通称ダークナイト
薬それ自体の威力は少ないが、男性の精液を受けると威力を発揮する。
精神的な興奮はコカイン様だが、疲労感の消失、集中力の向上効果があり記録では1週間寝なくても活動できる
その効果を目当てに上流階級の女子や特殊部隊志願の女性兵士に取引されることが多いが、強い依存傾向があり
金と肉体双方が売人たちに搾取されるケースが多いのだ。
「この覚せい剤が出回ってから今年で10年になる。にもかかわらず、依然として指定薬物として登録されていないのは、少なからず上流階級に愛用者がいる証拠だろう。」
ビクトル・フランクリンはそういいながらすでに冷めているまずい紅茶をすすった。
彼が苦い顔をしているのは紅茶のためだけではないだろう。
元は、科学捜査班のケミカル部門で活躍した彼も、今は再就職先であるこのトヨトミ製薬で脱法ドラックの鑑識をしている。トヨトミ製薬は数年前から脱法ドラックの治療薬部門を立ち上げており、この分野での市場拡大を図っている。彼のような探偵やビクトルの給料の一部は彼らから支払われている。
むろん慈善事業ではない。治療患者の発掘が目的だ。
ここは、トヨトミ製薬の研究所兼提携病院施設だ。さてどうしようか?
1 ビクトルの話をきく。
ダークナイトの研究が進んでいるかもしれない。もう少し話をきくか?
2 薬物病棟にいく。
事件の調査でしりあった被害者の女性たちが治療を受けている。治療によりだいぶ改善している子もいるようだが、まだ、治療が進んでいない子はゴウに援助を求めるかもしれない。性交も治療の一環だ。一度顔をだしておくか?
4 探偵局
現在ゴウ寝床兼、仕事場だ。同業者のキャシーが新たな糸口をつかんでいるかもしれない