交差 2
「いっつも誰かに¨好きです¨なんて言われてて。私なんか1回も言われたことないから、羨ましくて」
ため息なんて出しちゃって。
羨ましいって、そこ違うだろ?
嫉妬するだろ?
「初恋相手なんだよね、優紀は。」
おっ!
ちょっと赤くなったって。
少しは可愛いとこあるじゃないか。
「でも、こんな私なんかと優紀が付き合うはずないじゃない?いっくらでもいるんだよ?優紀を好きって言う綺麗な人が。ないない!ありえない。こんなんが隣にいたら…考えただけで引くわ」
わからん……
鈍感か?
室長は、たぶん好きだぞ?
だから頑張って勉強したんだろ?
いっつも傍にいれる秘書になったんだろ?
気づいてないのか?
可哀想過ぎて同情するわ、あの非情男でも。
「あっ!だから、直人だって選ぶ権利があるよね?そっかぁ…ごめんね。そうだよね。こんなんじゃ、嫌だよね?断りづらいか、ごめんごめん。冗談だから」
なに勝手に今片付けた?
何にも言ってないだろが。
「充分、綺麗だと思うよ?綺麗って言うか…可愛いと思う」
なんで俺は、こんなこと言ってんだ!
でもマジに可愛いんだよ、この人。
「またまたぁ…いいよ、別にフォローしてくんなくても」
おい、何凹んでんだよ?
自覚もないのか?
疲れる女だぁ!
可愛いんだけど。
「俺は、お世辞なんか言うタイプじゃないんで。しようよ。今日でいい?」
「いいよ、無理しなくて。そんな流れでしたくないし」
そんな流れって…
別に俺は…
そういう流れとかじゃないし…
「直人もモテるからねぇ…女子社員に評判いいみたいだよ?そのうちに告られたりね」
笑いながら…笑ってないぞ?ったく…
室長もいっつも伝わらなくてイライラしてんだろうなぁ…
出張先で俺と社長の2人ランチ想像しながらイライラしてたりして…
それはそれで迷惑な話なんだけど、俺にしてみたら。
「室長とは…したりとか」
「……1回…した」
危ねっ!
また吹き出すとこだった。
してんじゃん!
「昔。なんか…昔過ぎて…たぶん、優紀は忘れちゃっただろうけど。まあ、良き思い出みたいな」
いや、忘れてないだろ?
むしろすっげ覚えてるだろ。
室長に聞きてぇ!
そんな聞ける仲じゃないのが歯痒い。
「したいって思わないの?室長と」
「ないない!だって、綺麗な人とさんざんしてるわけでしょ?比べられるの嫌だもん」
可哀想だな…室長
今日だけで、俺の中での¨室長可哀想値¨が、めちゃくちゃ上がったぞ。
不憫だ……室長。
「室長。お願いします」
この瞬間が一番苦手だ。
この人、ほんと誤字脱字に厳しい。
当たり前だけどな。
わかってるが、その当たり前が今の俺の頭では無理なんだな。
今日も隅から隅まで御丁寧に読まれ……
チラッと顔を上げ俺の方に…
「いちおう誤字脱字は、なさそうだが」
一息…
「ケタが、間違ってる。やり直し」
「マジ?」
つい出ちゃったよ…
「それ、気をつけろ」
すっげ低い声。
これは、絶対昔のワルかった頃がまだ抜けきれてないんだな。
自分の席に着き、軽くため息。
同時くらいに電話
「はい」
「直人?珈琲」
まったく人使いが……
まあ、社長だし…
珈琲を持っていけば、難しそうに書類を読んでいた。
「ありがと。」
前のテーブルに珈琲を置く。
室長からの忠告。
『社長が珈琲を倒したら、書類にかかるかもしれないから、社長の席に置くんじゃなく、必ず前のテーブルに置け』
ってことは、まぁ何回も倒してんだろうな。
前のソファに移動して珈琲を飲みながら
「ねぇ?ココ」
自分の横を¨ポンポン¨叩く。
「失礼します」
隣に座れば、顔が近づいてくる。
「直人最近シてないでしょ?」
急に何を言いやがる。
「どうしてですか?わかるんですか?」
ニヤッと笑って
「勘」
なんだよ、それ。
「なにか見れば、わかるかと思いました」
まあ、わかるわけないだろうけど。
「やっぱりシてないんだ。その言い方」
クスクス笑ってやがる。
言葉のアゲアシ取りかよ。
「直人?」
呼ばれて顔を向ければ、もう唇が重ねられていた。
重ねられて、舌で唇を舐められ…
唇を開ければ、舌が自然に入ってくる。
俺の舌を探り絡ませようと……
ココまでされたら俺だって。
最近たしかにシてないからなぁ…
遠慮なく堪能させていただく。
自分から舌を絡ませ、社長の頭を後ろで支え、社長の上顎を舌で撫で…
¨ンッ……ンッ……¨
長くて濃いキスの時間。
シたくなるよな…
唇を離すと¨ツーッ¨と糸で繋がれ卑猥さが増す。
「シたくなった?」
トロンとした目で見られ、否定も出来ない。
「シちゃう?ココで」