背伸びしたいお年頃。 9
唇を離して結菜ちゃんの表情をうかがう。
瞳がウルウルしている。焦点は定まっていない。放心状態で僕を受け入れてくれたのかな…
「翼さん…私を、女にして…」
うわ言のようにつぶやく結菜ちゃん。それだけで理性が吹っ飛びそうだ。
「僕でいいなら…」
大人気取りでそう応えたものの、嫌な汗が腋の下を通過した。
そもそも翼は処女を“女”に出来るほどの経験は無かった…
増しては処女を抱くのは初めてである。
まあかろうじて童貞ということでは無かったが、相手にした女たちはかなりの経験を積んだ者たちばかりで、常に翼が下にいることしか無かったのだ…
こうなるんだったら誰かしらにアドバイスしてもらえばよかった、と思いつつもそんな相手はいないしまさかこんな展開に自分が持ち込めるなんて夢にも思わなかったし…ますます余裕がなくなる。
(…こういう時…AVなんて参考にならないよな)
両手で豊かな乳房の感触を楽しみながら、恐る恐る彼女の唇に再び顔を近づける。
今度は結菜のほうからキスしてきた。
もっと近づきたいが、場所が場所だけに上手くいかない。
せめて空間にもっと余裕のある所で…
「場所を移さないか?…せっかくのことなんだし、ちゃんと結菜ちゃんが想い出に残る所でしようぜ…」
自分がその方が都合がいいんだけど、いかにも結菜ちゃんの為にと…という言い方をする…
「想い出でに残る場所って…何処です?…」
「よかったら家に来ないか?…一応広いベッドもあるからさ…」
翼は結菜の返事を待たずとして、車のエンジンを吹かしていた。
…優しい人だな
私は翼さんの横顔を見ながら、そう感じた。
アリスは頼りなくてオタクっぽく見えるって言ってたけど、こうして近くで見るとすっごくかっこいい…
翼さんとなら、私…
海がどんどん遠くに離れていく。
アリスは、あの人と一緒になるのかな?