背伸びしたいお年頃。 3
少女たちの視線が一斉に自分に向けられ、翼は慌てて視線を外す…
派手な外車に載ってはいても、自分には自信が持て無いのだ。
「あらぁカッコイイ車ねぇ…中の人もそこそこじゃない…?」
瑠璃亜がニヤケながら肩肘でアリスを小突く。
まあ確かに“そこそこ…“
それが返ってアリスにとっては好感が持てる…
完璧超人のイケメンなんてこの世にいるはずないのだ。
高望みしてはいけない。
しかしアリスにしても、瑠璃亜たちにしても、翼は同級生なんかより遥かに魅力のある男に見えた。
それが思春期特有のちょっと背伸びしたい気持ちかもしれない。
「誘っちゃう?」
夏凛が皆に聞くと、菜花が無言のまま微笑む。
「クスッ、菜花も賛成してくれるなんて意外だなぁ」
皆の中では品行方正なイメージの強い菜花ではある。
「そんなこと無いよ…私だってビーチバレーだけする為に、ここに来た訳じゃないものぉ…」
ちょっと顔を赤らめる菜花…
同性の皆から見ても、菜花は可愛かった。
「それなら決まりね」
アリスが皆の意見が一致したところでその場をまとめる。
仲良しグループのリーダーは彼女である。
アリスは翼に視線を投げかけると車を降りて海に来て、というアピールを行う。
その思惑を理解した翼だが、彼には躊躇いがあった。
あの子たちも僕が高梨家の嫡男と知ってのことなんだろうか?…
そう思うと、翼の浮いた気持ちも沈んでしまう…
今までに何度もあった逆ナン…
それは必ずと言っていいほどに高梨家の息子ということを目当てとした誘いだったからだ…