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デッドエンド
官能リレー小説 - ファンタジー系

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デッドエンド 77

「幼いころのことだから、向こうは覚えてはいないだろうが。バカみたいだが、俺にとっては支えなんだよ」
彼は静かにそう告げた。

「別に、バカみたいだとは思わない」
私は、何と言っていいかわからず、とにかくそれだけは訂正した。
「…あなたは、」

口走りそうになった言葉を、私は意図して止めた。
私にどうしてほしいのか?
言葉にする前に、私はその答えに思い至ったのだ。
そして結論した。応じられない、と。

「だが何も約束はできない。私の目的は連れを取り返すことだ。目的を果たすのに、必要なことをするだけだ」
マクシムは小さく笑った。
「君は少しノエミに似ているよ。あれも、変なところで真面目な娘だった。今はどうなってるかわからないが、きっと君とは気が合うだろうな」
マクシムの言葉に、バルディッシュの女を思い出す。

「悪いが、それはごめんこうむる」
「だろうな。残念だ」
本気なのか冗談なのか、よくわからない調子で彼は言った。



鉄刀を、ガツ、と岩に刺しながら、体を引き上げる。
いくら丈夫と言っても、こんな使い方をしたら刃がこぼれて使いものにならなくなりそうだ。
もったいないと思わないではないが、何時間登り続けるはめになるかわからない状況だ。
素手で岩壁に取り付くよりは、消耗も少しは減るだろう。

壊れたってかまうか、とも思った。

…どうせ、この刀はもうリオンのものだ。



※※※※※※※



リオンの部屋を、エディットが訪れたのは、夜もとっぷりと暮れてからのことだった。


「心の準備はいい?首長にお目通りがかなうなんて、運のいいこと」

リオンは不機嫌だった。
礼装女官と称する女たちによって、風呂に入れられ洗われた上に、手枷つきの手を、さらに肘を曲げた状態で胸にベルトでぐるぐると固定されてしまったのだ。
今までより、さらに自由がきかなくなった。

エディットは、礼装女官に合図して扉を開かせた。
扉の向こうに置かれたものを見て、リオンは鼻の頭にしわを寄せた。
車輪付きの檻だ。猛獣を運ぶのに使うような。


檻に入れられたまま、渡廊を渡ることになった。

鉄格子ごしに見る限り、何の変哲もない石橋だ。
両端が二つの塔の中腹に突き出した橋台に固定されているのみで、他に支えるものは何もない。
床版はごく薄く、揺れを吸収する構造が内蔵される余地もない。
下部アーチにもなっていない。中央に向かって自重でわずかにたわんでいる以外は、ただまっすぐに伸びている。
だがぼうっと眺めているうちに彼は、橋の欄干の一部が、光る索状の金属でできていることに気づいた。
「……あ」
彼は目を瞠った。
彼の知識は、その金属の正体を正しく判別したのだ。

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