PiPi's World 投稿小説

おてんば姫、ファニーの冒険
官能リレー小説 - ファンタジー系

の最初へ
 38
 40
の最後へ

おてんば姫、ファニーの冒険 40

死者の従者、いや監視者か。それらを見て思う。
アンデッドの従者を従えるのは僕たち魔術師には珍しいと言うほどではないが・・・骨のメイドさんってのは流石に初めてだよ。
この骨の娘さんたちは僕と一緒に捕まった女の子たちでは無いようだけど、彼女たちはどうなったんだろ・・・・せめて無事であってくれるといいのだが。
だとするとどこに捕まっているんだろう。どうにか連れ出したいが・・・。

彼は先日捕まってから、逃げ出す機会をうかがっているのだが魔物たちの警戒は強く、隙らしい隙もうかがえない。その上。
トントン
「誰だい」
「失礼いたします。ステファン様、お機嫌はいかがでしょうか。」
「君か・・・。」
メイド服の女性が入ってきた。知的な雰囲気の美人だが、人間ではない。紫色の美しい髪、ややとがった耳、人間の娘では滅多に無い美しく、非常に豊かに盛り上がった胸、対照的にかなり細い腰。フリルスカートの中から伸びるすらりとした美しい脚。
ふるいつきたくなるような美しい姿をしたその女性は、サキュバスなのである。
彼女の姿を見て、ステファンは緊張と警戒を深める。
「そうだな……快適だよ。尤も、僕が何も知らない小鳥だったらの話だけれど」
ステファンは悪意や不満をまったく隠さない皮肉で答えた。
対する彼女は眉一つ動かさず
「そうですか」
とだけだ。
欲望に忠実で直情的な傾向のあるサキュバスにしては珍しい反応だった。
それもそのはず、彼女は普通のサキュバスじゃない。彼女の名はリリス、大いなる淫魔の太母の名を貰った特別なサキュバスなのだ。
「ところで何の用だい? こんな身だから忙しい訳じゃないけど、魔族との会話をする程人恋しくはないんだ」
つまり、お前とは話したくないから用だけ済ませて消えろ、という意味だ。
彼は思った。
こんな結界の中でなければ彼女など魔法で打ち倒しているものを・・・。
彼は王族として政務の為に学んだ精一杯の演技力を動員して表情を変えないでいる。
この屋敷は特殊な結界の中にあり、魔法は大幅に制限される。そのため強力な魔術師であるステファンも耐える日々を送っていた。
ファニー姫・・・・・。
見合いのためにと送られてきた肖像画のファニーを頭に思い浮かべる。
金色の髪、大きな青い瞳、バラ色の頬、小さくかわいらしいピンク色の唇。外見だけを見れば、完璧なお姫様。じゃじゃ馬娘だと言うことはモンデール駐在経験のある廷臣たちから聞かされていたし見合い話の前からタフトの商人たちが集めた噂に聞いていた。おてんばだが、性根はまっすぐな心根のよい女の子だというのは肖像画と、漏れ聞く噂から察せられた。
正直な話、彼は肖像画のファニーを見て一目惚れしていたのだ。
そんなステファンの心情を見抜いたかのように。
「では単刀直入に言います。ファニー王女がここに来てます」
そうステファンに告げると、そのまま立ち去ろうとする。
ファニーの名を聞いた途端、慌てて立ち上がりリリスを呼び止める。
「待て、ファニー姫は来ているとはどういうことか、事情を説明せよ」
しかし、リリスは
「おや、卑しい淫魔風情と口などききたく無いと思いましたが、これは失礼いたしました」
努めて表情を消して質問を発する。
「モンデールのことだ。姫をむざむざ捕らえられたとは思えん。彼女は何をしに来ている?」
「さあそこまでは。ですが獣人たちと行動をともにしているようですわ。」
獣人たちと・・・?一体何をするつもりだ?私を助けに来てくれたのか・・・?
いや、いかなおてんば娘とはいえそのような任務に王のただ一人の子供を、それも女性を投入するわけがない。では一体何を・・・。
考えるが何を考えてのことか彼には思い浮かばない。ステファンは先日のモンデール攻撃のことを知らないのだ。

SNSでこの小説を紹介

ファンタジー系の他のリレー小説

こちらから小説を探す