群れなして蠢く美しき屍 14
近くにいるグループの男子生徒などは息も絶え絶え。
もはや精根尽き果てる手前で、悲鳴を上げることすらできない様子だった。
あの時誠が迷わず屋上に逃げなければ、きっと彼もああなっていたことだろう。
誠はあのときの判断の正しさへのわずかな安堵、そして捕まったときの恐怖を想像しながら連中を観察する。
「・・・?」
そして彼は気づいた。今見ている連中への妙な違和感に。
「・・・あれ?先生、ウチにあんな生徒、いたっけ?」
「いえ・・・。でもあのコたち、どこかで見たような・・・」
一緒になってのぞいていた、弥生と美樹も気づいたようだ。
2人とも首をかしげながら、小声でやり取りしていた。
そう。目の前で乱交(または逆レイプ)にふけっている連中は誰一人として見覚えのない生徒ばかりなのだ。
いや、それは少々表現が正しくない。
どこかで見たような覚えはあるのだが、それが誰なのかわからない・・・そんな人間ばかりなのだ。
学校中の人間がおかしくなっていたことを考えれば、教職員、先輩・後輩がいてもおかしくはない。
だけど、それでも知ってる人間の1人も見受けられないのはおかしすぎた。
この妙なデジャヴは何なのか。
その謎を解き明かしたい衝動が、3人の心にわきあがってくる。
だが今優先すべきは謎の解明ではなく、ここからの脱出だ。
いつ連中が捕まえた男子生徒に飽きるかわからないのだ。
謎解きに夢中になって逃げられなくなっては、元も子もない。
誠は周囲の安全を確認すると首をかしげる弥生と美樹を促し。
静かにその場を後にした。
周囲の状況を確認しながら、慎重に進む。
当初の予定では2階から渡り廊下を抜け、職員室に向かうはずだった。
しかしおかしくなった女子生徒たちのグループがいたため、誠たちは1階まで移動し、そこから職員室へ移動する迂回ルートを選択した。
誠にとって不幸中の幸いだったのは、女子生徒たちがおかしくなったのは朝のSHR(ショート・ホームルーム)の時間であったことだ。
おかげで生徒たちは誠たちのいる教室棟に集中しており、比較的あっさりと職員室のある特別棟へ移動できた。
職員室前にやってきた一同は、ドアの小窓から職員室の様子をうかがう。
この異常事態を止めようとしたのか、中には人影らしきものはない。
中の安全を一同は、安堵のため息をつきながら職員室へと入っていった。
「・・・ふう。思ったより早くここに来れたな。
先生。車のキーはどこですか?」
「私のバックの中よ。ちょっと待っててね・・・」
弥生はそう言うと自分の席に向かう。
「よかったね、河原くん。
この調子なら、思ったより早くここから出られるかも・・・って。
何してるの?」