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深淵
官能リレー小説 - ファンタジー系

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深淵 1

本来堅く閉ざされているはずのその門は、まるで挑戦者を誘うようにその扉を開放し、その奥から暗鬱な空気を吐き出している。
その奥に居るのは一人の老人。
長い白髪とひげを持つ、老いてなお筋骨隆々とした肉体を持つ老人だ。
彼が身につけて居たのはギリシャの民族衣装であるキトンだった。
老人はギョロリと扉の外を睨めつけると、雷の如き声で語りだした。
「深淵は開かれた!アビスの奥底にて、混沌たる祖神、古の巨人、そして毒蛇より生まれし怪物たちが待ちうけておる!!恐れるものなき英雄たちよ、オリンポスの祝福をもって深淵を踏破してみせるがいい!」
その言葉は世界へと響きわたり、数多の勇者たちが各地より門を目指して集まってくる。
あるものは星を撃ち落としたという弓の名手。あるものは山を割り開き道を作ったという剣士。あるものは万象の理に通じたという賢者。
海の囲みし大地のあちこちから、その名も高き勇士たちが続々とやって来たのだった。

その少年もまた、門の噂を聞いて旅立ったものの一人。
地元では並ぶもの無きスタミナと雄の証で知られ、収穫祭の夜には近隣の村々全ての女たちを甘く蕩かしたという。
だが、これらは誇張された噂にすぎない。少年にはそんな力は無かった。
周りの者が勝手に騒ぎ立て、少年を無理矢理にその気にさせてしまったのだ。
他の者は更に悪質で、どれもが嘘の名声だった。
だが全てが嘘なわけではなく、それなりに優れた力を持っていた。
コルセアという名の少年は己の力を見誤り、また周囲の者の言葉を鵜呑みにして、一人でこの扉の中へと足を踏み入れてしまう。
それは余りにも浅慮で、愚かしい選択であった。
しかし、少年はその愚行によって、後に『伝説の勇者』と呼ばれることになる男と出会うことになった。
その出会いこそ、彼の運命を大きく変えることとなる。
コルセアが扉の中に踏み込んだ瞬間、そこは異界へと変貌していた。
薄暗い空間には無数の松明が置かれており、視界は悪くない。
周囲を囲む壁には彫刻が施されていて、神殿のような荘厳な雰囲気を感じさせる。
そこに佇んでいる者が居た。
彼は四角く削られた岩塊の上に腰掛け、退屈そうに虚空を見つめていた。
一見すると普通の人間に見えるその姿。
しかし、よく見ればそれが普通ではないことがすぐにわかるだろう。
まず目につくのは彼の頭部。そこには二つの角があった。
背は高く体格も良い。顔立ちは整っているのだが、どこか気怠げな印象を受ける。
衣服は腰布だけで、鍛え上げられた肉体が惜しみなく晒されている。

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