女嫌いが女になったら 51
『で。何で伸一郎が女に?てかホントに伸一郎?』
とりあえず気を取り直し、核心に迫る。
『実は・・・』
その美女、元伸一郎は事の経緯を語り始めた。
・・・。
『なるほど。』
かなりはしょったが、何とか事態を飲み込んだ数世。
『でもホントにそれでいいのか?もしかしたら、俺もお前も元の姿に戻れないかも知れないんだぞ?』
『・・・それは。』
小さくなる元伸一郎。
これは俺も危惧している事だ。元の姿に戻れる保証など、何処にもない。
あのエロジジィの言葉など、ほつれた細い糸のように心許ないのだから。
『それでも・・・。』
元伸一郎は表情を引き締める。言葉を選んでいる。すぅっと息を吸い、噛み締めるように語り始めた。
『僕は数矢君の友達で居たいから。側で・・・守りたいから。大丈夫。』
俺は頷いた。小百合も、弘美も。認めよう、君の決意。
『名前は・・・?』
俺が問い掛けると、はにかんだように笑い、彼女は答えた。
『衛(まもり)、刑部衛。僕が数世を守る。』
小百合と弘美が笑う。俺も笑い、つられたように衛も笑う。
『これからも、四人一緒だ。』
こうして、二年最強のカルテットが誕生したのであった。
5日後・・・。
いつもの道、いつもすれ違うサラリーマン、何もかもがまったく変わっていない。
しかしひとつだけ違うもの、それは周囲の視線。
『小百合、凄いよね。この・・・視線。』
『ま、まぁね。信じられないわ。』
『いいじゃない。こういうのって。う〜ん、いいわよねぇ〜♪』
『うん。・・・・これなら大丈夫かな。どれどれ・・・。』
美少女カルテット。それも、数世を初めトップクラスの美少女4人が歩いているのだ。
注目するなと言うほうが無理な注文である。
好奇、羨望、嫉妬、欲情、あらゆる視線が絡み付いてくる。
彼女達はそれには気にはしてはいたが、悠然と歩いていた。
『凄いなぁ・・・紳、いや、衛がいるだけで、こんなになるなんて。』
『そうよね。・・・あ、衛。手続きの方は大丈夫なの?』
パソコンを持っている衛。この辺は男の時とは全く変わらない。
ただし、美少女になって以来、あの瓶底眼鏡は掛けていない。
どうやら女になって、視力が伸びたみたい。
お蔭で『萌え〜〜〜!』度がアップしたが、本人には自覚がないようだ。
『うん。大丈夫。役所の方もハッキングして戸籍も変えたし、後は・・・。』
何やらヤバイ話をしてますが・・・。この辺は聞かないでおこう。
『ははっ、衛は相変わらずね。学校では、くれぐれも女らしく・・・ね。』
『うん。わかっているわ。か・ず・よ♪』
にっこりと微笑む衛。大丈夫かな・・・。