デッド・ショット 25
ここから逃げ出す。あの四人から。無理。たとえ逃げられたとしてもその後は政府に捕まればモルモット。国外へは。自分には各国へのパイプが無い。何より島国であるこの国から同やって。泳いであの国に戻る。それだけは不許可。淺川を頼る。それだけはありえない。
サーシャは理解した。理解してしまった。
自分がもうどうにもならない、詰んだ状況だということに。
「終わった、何もかも……」
「……終わるわけないだろ。」
ベッドのしたで床にぶつけた頭を擦りながら浅川は起き上がった。
「裏社会に生きてる奴らは、どうしてこうも自分が切り捨てられるって考えるかな。少しは仲間を信頼してやれよ。」
「ボクをこんな身体にしておいて、よくそんな口が聞けるね。」
手負いの獣のように瞳は潤ませているものの、いつでも浅川の喉ぶえを噛み切れる臨戦態勢になった。
「少しは喜べよ、俺はお前の内なる願望を叶えてやったんだぞ。」
ピンポーン・・・
ピンポーン・・・
「おい、仲間の皆さんだろう、出てやれよ。」
インターホンの音が繰り返し鳴るが、サーシャはインターホンに出ようとしなかった。ただ浅川を睨みつけている。
「仕方ないな。」
浅川はトランクスを穿いて、インターホンに出た。
「浅川です。今サーシャと一緒にいます。入って下さい。」
「わかりました。」
イリーナの返事を受け、浅川は素早くドアを解錠する。するとスマイリーウィッチの仲間4人が揃って入ってきた。
一見何事もないような顔をして、その実4人とも周囲警戒を怠らない。
そして4人は見つけた。ベッドの上で野獣のように浅川を睨んでいるサーシャを。
「!! あなた、ペ○スは?!」
聞いたのはイリーナだった。
その言葉に、サーシャの表情がみるみる変わってゆく。
「う・・・・うわああああ・・・・・・」
大泣きするサーシャに、皆が駆け寄る。同時に浅川を警戒することも怠らない。
「ボク、ボク・・・・・・・・・・女の子に、なっちゃった・・・・・・。」
状況を完全に理解したスマイリーウィッチは、激怒した。
まるで、全員が名刀になったように鋭い殺気を放っている。
「これ、どういうこと?」
イリーナが問い詰める。
「私達の仲間に、なんてことをしてくれたの?!」
「サーシャに何をした?!?」
他のメンバーも口々に叫ぶ。
それを見て、サーシャはあることに気づいた。
「うう・・・・こんな、こんなボクでも仲間だと思ってくれるの?」
「当然ですわ。わたくし達5人は一蓮托生よ。ペ○スが有るかないかなんて、関係ありませんわ。」
そう言って祥子がサーシャを抱きしめた。その姿は、仲間への慈愛に満ちていた。