女淫監獄 3
とぺこりとお辞儀をして自己紹介をする玲香。
「よし、まだ時間もあるからちょっとガールズトークでもしようか」
千鶴は部屋の隅をがさがさと漁ると棒状のものを人数分取り出し、そのうちの一本を玲香に渡した。
「え?これ…チョコバー?なんで刑務所に?」
「あー、それ買ったの。ここじゃヤバいもん以外は金さえ払えば大抵の物は取引できるの」
全員にチョコバーを渡した千鶴は銀紙を剥がし、パクリと食べる。それを見て玲香も口にし、暫し女囚達とここでのルールやシャバでの出来事を話し合った。
「作業始め!!」
十三時、看守の号令と共に一斉に作業を始める女囚達。ここでは年齢ごとに、作業が分担される。十二歳以下の女児は内職等の軽作業、十三才以上二十歳未満の少女は縫い物やアクセサリーを中心とした小物作り、二十歳以上は塀外で農作業や木材加工といった重労働に割り当てられる。
玲香は千鶴、御子と同じビーズを使ったアクセサリー作りの担当になった。長い机に二人一組で座り、細い糸にビーズを通していく作業はかなり根気がいった。
「あっ……」
当然、初日から上手くいくはずもなく玲香の手からビーズがこぼれ落ち、机に散らばってしまう。慌ててかき集めていると、不意に隣から手が伸びてきた。
「これ、あんさんのやろ?落ちとったでぇ」
「あっ、ありがとう…ございます」
少女の手からビーズを貰い、作業を再開する玲香。すると、隣の少女が話しかけてきた。
「あんさん見ない顔やなぁ、新人?」
「あ…はい、そうです」
「やっぱり、そうやと思ったわぁ」
黒髪おかっぱ頭、細目の京都弁少女は看守に聞こえないようにボソボソと玲香と話す。
「うちは朝倉 未央ちゅうんよ……暫くはお隣さんやから、仲良うしよなぁ」
「は……はい」
「そんなにびびらんといてぇなぁ、取って食うわけちゃうのに………ま、『青腕章』さかい無理ないかぁ」
この刑務所は上から見ると▽の形をしており、中央と角には円柱の看守塔が建っている。そして、それぞれの辺をA棟、B棟、C棟に分けており、それぞれ罪の重さごとに収監している。
A棟は主に横領、窃盗、売春といった比較的罪の軽い(といっても厳罰化で最低でも五年)犯罪者が入り、目印として赤い腕章を付けている。
B棟は傷害、強盗、性犯罪等のワンランク上の犯罪者が入ることになり、黄色い腕章を付けている。
そして、C棟は重犯罪者や元死刑囚、すなわち殺人、薬物売買、放火殺人や強盗殺人等をした犯罪者が収監されており、その証として青い腕章が付いている。
つまり、玲香の隣の少女 未央は少なくとも殺人以上の罪を犯していることになるのであった。
「新人ならもしかしたら『歓迎会』があるかもしれんなぁ」
「歓迎会……ですか?」
「まぁ、そん時になったらわかるわぁ…と仕事に集中集中」
意味ありげな笑いを浮かべながら作業に戻る未央。玲香は不思議そうな顔をしながらも看守が近づいてきたので自身も作業に戻った。
その後、作業が終わり食事。食事はおそらく近海で獲れたであろう魚をふんだんに使った料理と刑務所にしては中々豪華な食事だった。そして三十分の入浴を終え、玲香は房へと戻ったのだった。