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龍の覚醒
官能リレー小説 - 同性愛♂

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龍の覚醒 11

俺の下に居る男の肉体も観察する。案の定、胸に刺青があった。抜け出る前となんら変わりが無いように思える。
先程の肉体変化が興奮した時に見た幻覚のように思えてきた。
しかし、現実だと俺には理解出来た。
俺の中に今までに感じた事の無い新たな感覚が生まれていたからだ。
まるで体に新たな部品が付け足されたようだった。
俺はその新たに出来た感覚とやらに意識を集中させる。
「ううぅ」
俺の体が赤く色づいて顔が竜に変じた。下で横たわっている男はそれに驚く事も無く、竜化してみせた。
竜の顔が突き合わされる。
俺は男の右横に降りて、元の姿に戻した。男も同じく元の姿に戻っていた。
とにかくどこから話して良いのか分からなかった。しばらく黙ったまま体を擦りつける。

しかしこのまま黙ったままというわけにはいかない。俺はとりあえず自己紹介をした。
男もそれに返した。
「俺と同じ名だ、俺も孤児院の前に捨てられていて龍という名になった」
名になった…という言い方に俺と同じ理由を感じた。
胸に竜の刺青があるから、それだけの理由。
親近感を感じたが同じ名というのは少しやりにくいと思った。


俺は彼を水龍と呼ぶ事に決めた。蒼い肉体はまさに水のようで、しかも男が孤児院で付けられた名字は菊水なのだ。
これほどぴったりな呼び名は無い、と思った。俺は気分が良かった。
俺は、竜になると体が火のように赤いという事で火龍と呼ばれる事になった。流れからいって当然だった。
名の付いていない犬に外見そのままの名を付けたのに似ていて、面白くなってきた。

横になったまま、自己紹介を続ける。
水龍の生い立ちは驚く程俺と似たものだった。
その一つ一つに耳を傾け、俺も自分がこんなにも饒舌に話しが出来ることに驚きながら、水龍に今までの総てを語った。
「え?…火龍、自衛隊に?」
水龍が驚きの声を上げたのは、俺が明朝の入隊を話した時だった。
「ああ、だから折角知り合えたのに、水龍と自由に会うことは出来ないと思うんだ…」
俺は出来ることなら一時も長く、水龍と居たかった。
誰かと"離れたくはない"という、始めた芽生えた寂しさにも似た感情に戸惑う。

「そんな顔しなくても大丈夫だ…俺はいつも火龍と一緒だよ。」
愛くるしい笑みを浮かべながら、水龍が身体を擦り寄せてくる。
俺は水龍の逞しい腕に身を任せながら、人前で始めて涙を落とした。

涙が俺の中の黒い物を流し出してくれたのか、大分落ち着いてきた。
ふと、思い出す。ここはどこなのだろう…、そしてどうやって帰ればいいのだろう。
入隊をほおりだしてここで水龍と暮らすのは良いと思う、しかしこの空間には食料になりそうな物は無い。このままでは双方助からないだろう。
俺は周りをよく観察した。
無限に続いているように見えた石畳にも限りがあり、浮島のようになっているように見える。
宙に立方体の石が浮いているのも視認出来た。
「とりあえず、行ける所まで行ってみるか…」
本来なら自分が来た所まで引き返すのが正しいだろう、だがどこから自分がここに来たのか分からないのだから仕方がない。
俺は水龍の手を取って立たせた。その時、地面に落ちていた2つの小さなネックレスが光を発した。
「グ!」
あの時の股間の痛みが発生し、俺と水龍は物を合わせた。合わさった所から透明な液が飛ぶ。
ネックレスは突如、膨れ上がり石畳の上にごとりと転がる。
巨大な剣と対になった大型ナイフになっていた。どちらも美しくてそして立派だった。
「あれは俺達に与えられた武器だったのか」
水龍が驚きの声をあげる。
しかし、もう1つの立派な武器の方に気が行ってしまうのだった。

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