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非線型蒲公英
【コメディ その他小説】

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非線型蒲公英 =Sommer Marchen=-76


「お前に、プライドは無いのか…?」
 問うだけ無駄の様な気もしたが、聞くだけ聞いてみた。
「ハッハッハ!! 何を言い出したかと思えば!! そりゃあ、当然ありますよ!! 高性能アンドロイドとしての、揺ぎ無い至上のプライドが!!」
「メイドとしてのプライドを聞いているんだけどな…」
「そんな!! メイドなんて!! 数十は下らない、数多い私の肩書きの一つに過ぎませんよ!! 重要なのは個ではなく、全ですよ!! 弟様!!」
「ああ…何かそれ、前に聞いた事があるな…姉さんにコンビニ弁当のおかずを奪われた時とかに…」
「わ、私なんて!! 身体を一部バラされて、KY-06さんの部品にされた時に聞かされたんですよ!?」
「は…? け、KY-06って…姉さんはまだ、そんな物を…?」
「ええ!! 確か、ふぇ…なんとやらと言う名前で…!! 完成の暁には、単機で空母一隻分の戦力を撃滅出来るとか何とか!! そんな感じの事を語りながら、イヤな笑みを浮かべてましたよ!? 琴葉様が!!」
「どうして、そんなブッ飛んだ代物を次々と…姉さんは」
 そうやってヘクセンと、共通の話題である姉の暴挙について、ああだこうだと語り合っていると――
「…随分、楽しそうですね…」
 背後から、一際大きい包丁の音と共に、異様に負の感情の篭った声が聞こえた。
「…別に…だからと言って、何だと言う訳でもありませんけど…ね…」
「て、手伝おうか?」
「…いえ…もう、殆ど終わってますから」
「じ、じゃあ、片付けは俺がやるよ」
「…なら…それよりもまず、配膳を手伝ってもらえますか」
「う、うん」
 そんな中…ヘクセンはと言うと、ひよちゃんの声を聞いた時点で、部屋の隅で丸くなって口笛を吹いていた。


「…こういう遅い時間にご飯を食べるのは…身体に良くないんですけどね」
「まあ、どうせ日が変わるまで起きてる訳だし…んぐ…ああ、味噌汁…味噌汁なんていつ振りだろうか…」
 ヘクセンが体育座りになりテレビを眺めている横で、二人は遅めの夕食をとっていた。
 その内容は、白米に味噌汁、味付け海苔。妃依にとっては、一人で食べていた時のいつもの夕食メニューだった。
「…それなんですけど」
「え? 味噌汁? 凄く美味しいけど」
「…違います…そっちじゃなくて…」
「いや、勿論、ご飯も美味しいけど…?」
「…そうではなく…日が変わるまで、の方の話です」
「ああ…うん、やっぱり、ひよちゃんちで時間を潰すのは迷惑かな…?」
「…いえ…むしろ…帰るのは…その」
 左手に持ったお椀の中の味噌汁の濁りを眺めながら、妃依は微妙に言いよどんだ。
「?」
「…面倒、じゃないですか」
 脳内で色々と適当な言葉を思索し、迷った挙句、妃依はそう呟いた。
「ま、まあ…わざわざ、危険かもしれない場所に戻るのも馬鹿馬鹿しいけど」
「…何でしたら…今日はここに泊まってくれても…構いません…けど」
 結局、妃依はそれを言いたかったのだ。
「えっ…い、いいの?」
「…今日は、ヘクセンさんも居ますし…おかしな事には…その…ならないと思いますから」
「ふ…ふっふっふっふ…ふははは…!! マスター!! 私が居るから!? おかしな事にはならない!? ハハハッ!! 甘い!! 甘いですね!!」
 身体はテレビの方に向けたまま、上体だけで振り向くと、ワキワキと手を卑猥に動かしながら、ヘクセンはさも嬉しそうに言った。
「…何が甘いって言うんですか」
「弟様の生態に関しては!! マスターよりも多くの情報を持っている私ですよ!? 甘言で弟様をけしかける事くらい余裕で出来ますよ!!」
「…それは…」
「ハッ、お前の言葉なんかに惑わされるとでも思ってるのか? この俺が!!」
 不敵な笑みを浮かべながら、ビシッと親指で自らを指す聡。


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