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非線型蒲公英
【コメディ その他小説】

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非線型蒲公英 =Sommer Marchen=-55


『大丈夫よ、『ソレ』は、そんなに酷く無いと思うわ…燐は見た瞬間、気を失ってしまったけれど』
「…全然、大丈夫じゃないじゃないですか…」
『聡の足が邪魔で、閉めるのも面倒だわ。目を伏せてこっちまで来なさい』
「は、はあ」
『アアッ!! こんなに手の届きそうな場所に在るというのに!! 私の身体は今、この世で一番遠い場所に!! なんて不幸せな私!! きっと、観客席は嗚咽と涙で埋め尽くされているに違いありませんよォッ!?』
 ヘクセンの絶叫は相変わらず無視され――美咲と妃依の二人は、両手を使って目鼻口を押さえながら、何とか危険地帯を乗り切ったのであった。


 ――真っ白な空。さらさらと静かに流れる水の音。
 遊佐間聡は、気が付くとそんな所に居た。
「ん…あ…? 俺、寝てた…のか?」
 半身を起して周りを見渡すと、そこは、玉石が敷き詰められた河原のようだった。道理で寝ていて痛かった筈だ。
 それにしても、頭がぼぅっとしているのか、川の上流と下流のずっと向こうは、靄が懸かったようになっていて見渡せない。
 ふと、対岸を見ると、子供達が石を積んで遊んでいるのが見える。その傍らには、保護者だろうか、バットのような物を持った、赤く日焼けした大柄な男性が立っていた。
 車の音も雑踏も聞こえない。川のせせらぎだけが耳に届く、とても静かな情景だった。
「何だか知らないけど…静かでいい所だな…」
 欠伸を一つ噛み殺し、腕を枕にして再び横になると、聡はそう呟いた。
 何も考えたくなくなる程に良い気分だった。
「あの…貴方が『ユサマ・サトシ』さんですか?」
 ぬっ、と天を仰いでいた視界を遮るようにして、横あいから見知らぬ女性が顔を出してきた。
 その女性の肩から垂れた長い髪は、脱色しても成し得ないような綺麗な白だった。ふわりと花の香りが漂った気がした。
「…え…あ…そう…ですけど」
 答えるまでに、たっぷり二、三秒呆けてしまった。彼女に見惚れていたのである。
「そうですか…では、早速行きましょう」
 と言って、白髪の女性は手を差し出してきた。
「え? 行くって…どこへ? …と言うか、誰ですか…?」
 白髪の女性の手を借りて起き上がりながら、聡は続け様に問うた。
「あ…私、茉莉と申します」
 胸に手を当て、さらり、と髪を揺らして首を傾げる。その仕草はとても可愛らしく、それでいて様になっていた。
「は、はぁ…茉莉、さん…で? 俺に何か?」
 初対面の女性に(しかもかなりの美人に)『何処かへ行こう』などと誘われた経験は聡には無かった為、それ故、溢れんばかりの下心も程々に怪訝に思ってしまう。
「御用も何も、このような所で油を売らず、ささっ、と川を渡って、向こうへ行きませんと」
 訳の解らないことを言う。
「川を渡るって…どうしてですか?」
「え…? それは、聡さんが死んでらっしゃるからですけれど」


 …


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