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非線型蒲公英
【コメディ その他小説】

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非線型蒲公英 =Sommer Marchen=-46


「では、食事の準備に取り掛かります」
「…あ、じゃあ…私も手伝います」
 美咲がキッチンへと立った事を確認した妃依は、彼女なりのプライドに後押しされ、追うようにしてキッチンへと向かった。
「あ、あの…お姉さま…服を着ても…よろしいでしょうか…?」
「私としては、その格好を眺めているのも楽しいのだけれど…まあ、構わないわ。寒いのでしょう?」
「あ、ありがとうございます…」
 罰ゲーム施行者である琴葉に許可を取り、安心して服を着ようとした燐に、怪人セロテープ男が、縛り付けられている椅子をガタガタと揺らしながら話し掛けた。
『あのさ、燐ちゃん』
「え…と、何でしょうか、遊佐間先輩…」
『服を着る前に、俺の目の部分のテープを取ってくれないか』
「それは…ご遠慮させて頂きます」
 聡の下心まみれの提案を、やんわりと受け流す。
「そうね。聡は、もう少しそのままで居て頂戴」
『もう少しって、どのくらいだよ…』
「まあ、明日の朝くらいまでかしら、ね」
 それを聞いた聡は椅子ごと、床に激しく倒れ込んだ。
『嫌だぁーっ!! それだけは嫌だ!!』
 今から半日近くもこの状態で居なければならないのかと思うと、聡は目の前が真っ暗になるような錯覚に陥った(事実、目の前は真っ暗だったのだが)。
「フフ…ほんの冗談よ」
『…』
 聡は、いつ姉が『と、いうのも冗談よ』と言い出すのではないかと、嫌な汗をかきつつ次の言葉を待った。
「とりあえず、食事の用意が出来たら解放してあげるわ」
『ほ、ホントに?』
「でも…その格好、悠樹や叔母様にも見せてあげたいわね」
 とんでもなく恐ろしい事を口走る。
『ややややややややや、やめてくれ!! 姉さん!! それだけは勘弁してくれっ!!』
「叔母様、きっと喜ぶと思うわ」
『そりゃ、色んな意味で喜びそうだけど!!』
「写真だけでも撮っておこうかしら」
「お姉さま…それでしたら、わたくしのデジタルカメラをお使いください」
 何故に持っていたのか、燐は鞄の中からデジカメを取り出して、琴葉に渡した。
「あら…燐、ありがとう…フフ」
『…ああ…』
 聡は、瞼の外で焚かれているフラッシュを感じ、取り返しの付かない絶望感に沈んで行く自分を幻視していた。


 聡が魂の抜けたようなモノに成り果てた頃、遊佐間家のキッチンでは、夕飯の献立についての協議が行われていた。
「やはり、このような日には、素麺か冷やし中華だろう」
「…残念ですが、麺はありません」
「む…そうなのか? では、宍戸は何が良いと思う?」
「…冷蔵庫の中身が絶望的な状況ですから…献立を決めてから、材料を買いに行くのが良いと思いますけど」
 何しろ、冷蔵庫の中には、昼食の残り(ちなみに昼食の材料は、美咲の持ち寄りである)しか入ってはいない。
「この時間に買いに行くとなると、すぐ傍のコンビニか?」
「…そうですね、あのコンビニ、野菜とかも売ってますから」
 そのコンビニは、大手チェーン店であるにも関わらず、地方の特色なのか、生野菜も置いているのである。
「ところで、金はどうするのだ?」
「…先輩…日給五万円…なんですよね」
 妃依はそれ以上は語らず、美咲の目を見た。
「うっ…いや…確かにそうなのだが」
「…それじゃあ」
 何とは言わずとも、意味はしっかりと伝わったようだった。
「わ、解った…出す。出せばいいのだろう…? 出せば…」
「…お願いします」
 その後、大まかな献立の指針を定めた妃依は、少々落胆した様子の美咲を引き連れ、マンションから徒歩五分の所にあるコンビニへと向かったのであった。


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