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卒業
【純愛 恋愛小説】

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卒業-4



やはり現地集合にしておいてよかった。
松永は基本的に時間にルーズだ。



長い付き合いで能代は誰よりもそれをわかっているのだが、やはり約束通りの時間に待ち合わせ場所に行ってしまう。

性格的にそうしなければ気持ちが悪いのだ。



今日も松永が時間通りに来ることは期待できなかったが、楽しみにしていた鴨居怜の絵画展をゆっくり鑑賞しながら待つのはむしろ能代にとっては嬉しい時間だった。



滅多にみることのできない実物を、一枚一枚網膜に焼き付けるようにゆっくり観ていった。


会場の半ばまで行った時、能代はハッとして立ち止まった。


ポニーテールの上の緑色のリボンがまず目に止まった。


女の子に自分から近づくことなど普段の能代ならば絶対にありえないことだったが、図書館の件のお礼が言いたくて思わず声をかけていた。


「―――こんにちは」


「あっ……はっはいっ!」


みどりは突然声をかけられたせいかひどく驚いたが、能代の顔を見るとすぐにパッと笑顔になった。


「―――能代先輩!こんにちは」


みどりの口から初めて発せられた自分の名前が、キュッと胸をしめつける。


今日のみどりは膝丈のベージュのニットワンピースにロングブーツを履いて、図書館で話した時より大人びて見えた。


「あの……この前はありがとう。おかげで助かったよ」


「いいえ……お役にたったならよかったです。………やっぱり、観にいらしたんですね」


絵画に目を移しながらはにかんだように微笑む。


知り合ったばかりなのに、その愛らしい横顔を、自分は随分前から知っていたような気がした。


「―――うん。僕も実は、君が来るんじゃないかと思ってたんだよ。」


「そうだったんですか?」


二人は照れ臭いながらも視線を交わして微笑みあった。





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