投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

非線型蒲公英
【コメディ その他小説】

非線型蒲公英の最初へ 非線型蒲公英 45 非線型蒲公英 47 非線型蒲公英の最後へ

非線型蒲公英-46

 9時になった。
 そろそろ、俺の家では宴もたけなわと言った所だろうか。
「…はあ、結局、何から何までやらせちゃいましたね」
 ひよちゃんが、呆れとも、同情ともとれる声で言う。
「いや、ホント、頭では解ってるんだよ。『もう、やめろ』ってね…でも、この手が!!」
「…感謝してますから、壊れないで下さい…」
 確かに、ちょっと今日は情緒不安定で、挙動不審かもしれない。
「やっぱり…なんかおかしいんだよ…いくらなんでも、今日のこれは自分でもはっきり解るくらい…変だ」
「…自覚しているのに抑えられないんですか」
「そうなんだよ。何故か、やめようとすると首筋の辺りがチリチリとして…それで、やめられなくなって」
 と言って、自分の首筋に手を這わせる。と、
「な…何だ? コレは…」
「…どうしたんですか」
「いや…変なものが、首に付いてる…ひよちゃん。悪いけど、取って…」
 何となく、自分では取れない気がした。何となく、だが。
「…はい、いいですけど…って、ほんとに、コレは…なんですか」
 聡の首筋には、単四電池程の大きさの筒がくっついていた。しかも、先端から伸びた針らしきものは、聡の首に刺さっている。明らかに何かがヤバイ。
「…『聡が自分に素直になれる素敵メカ』…って、書いてあります」
「ね、姉さんか…いつの間にこんな物を…!!」
「…とにかく、取りますね」
 予想に反して、あまり抵抗も無く取れた。
「う!! ちょっと、痛…」
 が、刺さっていた深度は、思いの他深かったようだ。
「…コレが原因だったんですか…先輩がやたらと働いていたのは」
「そうみたいだね…」
「…でも、先輩が素直になる機械…なんですよね、これ」
「ああ、姉さんがそう書いたんだから、そうなんじゃないかな?」
 姉さんが発明品に付ける名前は、大体が機能を説明している場合が殆どなのだ。
「…じゃあ、先輩は、こき使われたがってるんですか…いつも」
「そ、そうなのか…俺…?」
 そうかもしれない。
「…まあ、結果オーライですけどね、私にとっては」
「ひよちゃん…キミは鬼か」
 どっと疲れた気がした。
 俺が床にへたり込んだ、その時。
『…スター!! マスター!! 出してくださいよー!! 暗い所はいやー!!』
 箪笥の中から、誰か、女の人の声が聞こえてきた。
 その声を聞いた妃依は、表情を凍りつかせる。
「う、うわ!! 何!?」
 聡は驚き、思わず身を引いた。
「…さ、さあ、何でしょうか」
 妃依は平然としていた(目が泳いでいたが)。
『そろそろ、充電させてくださいよー!! 私は光充電式なんですから、暗い所怖いんですよー!!』
 怪奇現象が、暗所が怖いと。
「な、何だ…? ひよちゃん、これは一体…」
「…知りません、私は関係ありません」
 いつもとは違い、やたらと動揺している様に見える。
『この際、マスターじゃなくてもいいですよー!! 誰か親切な御方、助けて、この箪笥の引き出しを開けて!!』
 怪奇現象が、助けを求めている。
「あの…ひよちゃん? 開けないの? 箪笥…」
「…開けません」
「開けていい…かな?」
「…殺しますよ」
 確かに、女の子の部屋の箪笥を開けるという行為は最低だろう。が、その箪笥から助けを求める声が聞こえてきた時、人はどちらを選べばいいのか。俺は―――。
『死ぬ、止まる、消えるのはイヤーっ!! 開けてー!!』
「ごめん、ひよちゃん、やっぱり俺…見捨てるなんて出来ない!!」
 俺は、少しの焦燥感と、8割以上の下心を持って、箪笥の引き出しに手を掛け、一気に引いた。
 引き出しの中には一本の金属棒と、あと、白とか、ピンクとか、水色とか…色とりどりの―――。
 ゴスッ!!
 ―――俺の意識は途絶えた。


非線型蒲公英の最初へ 非線型蒲公英 45 非線型蒲公英 47 非線型蒲公英の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前