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非線型蒲公英
【コメディ その他小説】

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非線型蒲公英-22

 そして放課後。
 将棋部の部室にいち早く到着したのは、聡と悠樹であった。
「ういーっす…って、誰も居ないし…」
「聡君、今日の部活は何する?」
「あのな、部長はお前だろうが。それに、うちは将棋部なんだから一人で詰め将棋でもしてればいいだろ」
「えー…つまんないよ…将棋は二人でするものだよ?」
「はいはい。俺は寝るから…ん?…寝る…?」
 『寝る』という言葉を口にして、ある事に気が付いてしまった。
「どうしたの?」
「か、和馬が居ないから…あいつの家に泊まれない…」
 流石の俺も、笹倉家にいきなり押しかけていって『泊めてくれ』とは言えない。第一、和馬があの状態じゃ雫さんも病院にいる可能性が高い。
「じゃあ、聡君、泊まるところないの?」
「あぁ、アテはあるけど全部没だ」
 ひよちゃん家に二泊はマズイ気がするし、美咲と香奈は問題外だ。
「じゃあ、わたしの家に泊まる?」
 それは、考えもしなかった、いや、考えたくなかった事だ。よりにもよって杵島家とは…。
「いや、勘弁してくれ…」
「えー、どうして?」
「お前の料理は食いたくない」
「だ、大丈夫だよ…お母さんが作るから」
「お前、前にもそうやって俺を騙したろう…」
 以前、『お母さんの料理』と偽った悠樹の料理を食いそうになったことがあったが、やけにニヤニヤした悠樹の表情で気が付いたのだった。あれは危なかった…。
「それに、冴子さんの歓迎っぷりが怖い」
 冴子さん…悠樹の母、杵島冴子さんは俺の母さんの妹(つまり叔母)なのだが、姉妹なのに全く似ておらず、あの天然ヴォケとは比べようも無い程に非の打ち所の無いクールビューティーである。なのに、何故だか甥である俺は非常に気に入られているようで、杵島家に行くと冴子さんのせいで五日は我が家に帰れなかったりする。
 たしかに、我が家に帰れなくても問題は無い、むしろ良い物が食えるし、優遇される。だが、冴子さんの迫りようといったら…異常である。綺麗な人なだけにむしろ怖い。
 まったく、雫さんといい、冴子さんといい、俺は『マダムキラー』の能力でも持っているのだろうか…?
「お母さん、聡君のこと大好きだって言ってるもんね」
「ああ、知ってる。耳が腐るほど本人から聞かされた」
 ちなみに、冴子さんは結婚していない。未婚の母親である。非常に訳アリっぽいので詳しく聞いた事は無い。だからと言って甥に迫ってくるのはどうかしている。俺の理性もボロボロである。
「やっぱり、うちには来ないの?」
「ああ、冴子さんの病気が治ったら行くさ」
「えー? お母さんは病気にかかった事なんかないよ?」
「もういい…」


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