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非線型蒲公英
【コメディ その他小説】

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非線型蒲公英-21

 ―――あれは、人を殺すための毒だ。
 三年前、悠樹の料理を食って仮死状態になり、回復したのが八時間後。医師達が口々に『奇跡だ』と連呼していたのを覚えている。その時、目覚めた俺がかすれた声で最初に言ったのが、その言葉だそうだ。無意識レベルで感じていた危機を、誰かに伝えないといけないと思っていたのだろうか。今となっては知る術は無いが…。
「和馬が逝ったか…」
 俺は、意味も無くブラインドを下ろし、その後、指で広げたブラインドの隙間から外を見た。今、太陽は最も高い場所にあるため特に眩しくは無かったが、目を細める。気分的に。
「まぁ、死ぬ事は無いだろうな…多分」
 とにかく和馬は、うちのクラスから救急車で運ばれた本日三人目の人間となった訳である。救急センターの人も大変だ。
「しかし、こんな状況でも五時間目はあるんだな…」
 何故分かるかというと、既に先生がいるからだ。古文担当である静川先生は、ああやって休み時間中に教室に入ってくる癖に、授業をなかなか始めようとせず、ただ、ぼーっとしている変な教師だ。しかも担当教科は古典ときた。これでは寝ないほうがおかしい。が、しかし、今の俺は寝るわけにはいかない。姉さんの作ったアレのせいで。
 俺は、溜息半分舌打ち半分という微妙な感情を表現する。
 ふと、いつもより数割は静かな教室に違和感を覚え(まぁ、現に三人ほどいない訳だが)、周囲を見渡す、と、悠樹の姿が見あたらない。ようやくあの馬鹿も『責任』というものを感じるようになって、何処かでひっそりと泣きながら反省しているのだろうか。
「…いや、それは無いか…」
 あり得ない想像であった。多分、食後の便所(デリカシー0)か、授業があることも忘れて帰った(流石に酷)とか、そんなところに違いない。
「うー、聡君、今、ヒドい事考えてた…」
 背後から件の馬鹿の声。いつの間に…?
「人の考えを勝手に読むな!! と言うか、何考えてたのか本当に分かるのか? 言ってみろよ」
 すると、悠樹は赤面して、
「私を物陰に連れ込んで、無理やり…」
「馬鹿か!! しかもまたそれか!! 何が悲しくて昼休みにお前を襲う妄想をもんもんと膨らませてないといけないんだよ!!」
「えー…」
 何故かしゅんとなってしまう悠樹。
「考えてくれないの?」
「考えませんっ!!」
 何をいきなり言い出すかな…こいつは…。
「それよりお前、あの毒弁当で和馬が倒れた事には責任を感じたりしてないのか?」
「う…だって、和馬君にあやまろうとしたけど、全然返事してくれないんだもん…ヒドいよね、和馬君」
「いや、和馬は何も悪くないから、被害者だから!! 全面的に悪いのはお前だから!!」
 などと、くだらない話をしている間に、時間は過ぎて授業時間は残り十五分を切っていた。にもかかわらず静川先生は授業を始めようとせず、ただ、よく解らない言語のタイトルのハードカバー本を黙々と読みふけっている。
「静川先生、コレで給料貰ってやがるのか…。職務怠慢にも程があろうに…。」
 結局、静川先生は授業をせずにチャイムと同時に教室を去ったのであった。


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