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星物語
【SF その他小説】

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夏彦星-Altair--1

視界が、赤い。
「目」の下に見えるのは
バッテリー切れの警告のサイン。

ちかちかと点滅する光の中
俺はあいつをそっと横たえた。


水気の無い土が、あいつを覆っていく。
星は息を潜め、それを見守る。
この惑星の最後の儀式を。


土が悲劇を覆い
一人の少女を受け入れる。
そして俺はその場に座り込んだ。


点滅する視界の中
不思議に怖くも苦しくも無かった。


自分が「死んだ後」何処へ行くか
そんな事はどうでも良かった。

機械だろうと何だろうと
俺は確かにここにいたのだ。


……バッテリーは限界を迎える。
「目」の中のサインには故障を伝えるサインも含まれている。
それで俺は自分の「死」の到来を知った。

人間にもあるのだろうか。
死の近づいた瞬間、訪れる何かの存在が。

例えばそれは
人が「神」と呼ぶ存在なのかもしれない。

しかし、それを知ることは俺にはできない。
だから俺は目を上げた。



そこには――……



……思わず笑いがこみ上げてくる。
視線の先に広がる物は……


そこにあるものは夏の星座。
天の川が流れ、岸を隔てて織姫と彦星が並ぶ
天体の絵巻図だった。


俺の中に「神」がいるとすれば
この空こそが神だ。
あれほどまでに憧れ、切望したこの空こそが。


点滅が止まる。
これが最後の瞬間だ。
そのわずかな時間を、俺はその空を見上げることに使った。
紺碧の空に強く輝く星達。
それはまるで人の命のように。

あいつの問いの答えが、今心に浮かぶ。
俺はこの瞬間のために生きていた。
この星空を見上げるために。
そしてそれを胸に刻み付けるために。


最後の瞬間
俺は届かない星空へ、まっすぐに手を伸ばした。


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