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星物語
【SF その他小説】

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火星-Marth--1

見渡す限り、一人きりの大地。
歩いては休み、休んでは歩く。その繰り返し。
それを何時間続けただろう。

雲の中に息を潜めていたはずの星達は姿を現し、また夜の空を飾っている。

……南の空にただひっそりと光る星。他の星と違い、瞬きもしない星。
太陽系第四惑星――……火星。
休憩の間際、俺はその星を見つけた。

赤く輝くその星は小さな燈のようで
とても氷に覆われた星とは思えない。
この惑星と並んで輝く兄弟星。
あそこから見たら、この星もこう見えるのだろうか?
青く輝く水の惑星として。
たとえそこに「人」がいなくなったとしても。

休息のために入ったドームには人気が無く
ただ星達の気配が窓の外でひっそりと瞬いている。
この惑星の終末は、恐ろしいほど静かだった。

ぶぉん……
かすかな音が響いて、モニターは起動を始める。
人はいなくなってもなお、機械達は生きようとしていた。

その与えられた命を全うするまで。

人工衛星の見たこの惑星の姿は
ただ青く美しく、優しかった。

誰もいなくても、モニターは監視を続けている。
画面は次々と切り替わり、この世界の現状を伝えた。
俺達を閉じ込めた地下シェルターのハッチは全て開いている。
その出入り口付近には俺の見てきたように
おびただしい数の人々が重なり合って倒れていた。

息をするものは、誰一人としていなかった。
そう、俺以外は。

切り替わる画面の全てに人々はいて
そしてそのどれにも人はいない。
それがこの世界の終末の姿。

それでもなお、初めて見る地表は美しく
限りない優しさに溢れて見えた。
まるで宇宙で見たこの惑星の姿のように。

星の光はこの世界の悲劇を伝えない。
ひたすらにその優しさを伝えるだけだ。
水で覆われたこの惑星のその優しさを。

ふいにかすかな頭痛がした。
あまり時間は残されていない。
俺は疲れきった体を無理に動かす。
そしてあいつを抱えなおし、星達の待つ外へと歩き出した。

まだ、ここで終わるわけにはいかない。


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