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ゼビア・ズ・ストーリー
【ファンタジー 官能小説】

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記憶-5

「!!!」

 体が急に震えだし、全身から嫌な汗が出てくる。

「キアルリア?!」

 驚いた兄が心配して肩に手をかけた瞬間、全身にゾワリと悪寒が走る。

「っいやあっ!!」

 兄の手をはねのけ自分を庇うように抱く。
 目からは涙がとめどなく流れ、止まりそうになかった。

「姫様!大丈夫ですよ」

 ミヤが抱きしめ、背中をさすってくれる。

「あ……ぅ……」

 それでも、震えも涙も止まらない。

「キアルリア……」

 兄の悲痛な声が聞こえ、そのまま部屋を出て行ったのがわかった。

「……はぁ…はぁ……」

 なんとか落ち着いてきたのは5分ほどしてからだった。

「ご…めん……ミヤ…も…大丈夫……」

「謝らないで下さい。お辛いのは姫様なのですから……」

 優しく抱擁を解かれ、再びベットに寝かされる。

「ね……お風呂沸かしてくれる?」

「でも、まだ熱が……」

「お願い」

「……かしこまりました」

 とりあえず顔を拭くようにと濡れタオルを渡した後、ミヤは部屋から出て行った。

 体に負担がかからないようにと、ぬるめに設定された湯船につかり記憶の糸をしっかり辿る。
 自分に起こった事だから、忘れるのも目を背けるのも嫌だった。

 あの夜、ラインハルト兄様に呼ばれたのは覚えている。
 確か、翌日の予定に少し変更があるとかいう話だった。
 そして、兄の部屋へ入ると薄紫色の煙が立ち上るお香が焚いてあり、その匂いを嗅いだ瞬間、動けなくなったのだ。

 そうか……自分は兄に抱かれたのか……不思議と後悔や嫌悪感はなかった。
 近親婚が普通にある国だから、もしかしたらどちらかの兄と結婚する可能性もあるとは思っていたし。
 ではなぜ、体に支障がでるのか?なぜ、涙が止まらないのか?

「ああ……そうか……愛されてるわけじゃ……ないからか……」

 あの行為に兄の愛は感じられなかった。
 兄は自分を愛しているから抱いたのではない。
 再び流れ出した涙を拭く気にもなれず、ミヤが心配して様子を見にくるまでずっと湯船に浸かっていた。

 それから3日間、高熱と子宮からの出血が続いたらしい。
 らしい……というのはその間の事を全く覚えていないから。
 ただ、ミヤが付きっきりで看病してくれていたのはぼんやりと覚えていた。


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