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続・せみしぐれ〜color〜
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続・せみしぐれ〜color〜(後編)-23

「ん…」
少しの間、眠ってしまっていたようだった。
耳に届く蝉時雨で目を覚ませば、隣には、穏やかな寝息をたてる愛しい人の姿がある。

――夢じゃ、ないんだ…。

こみ上げる嬉しさの中で、まじまじと寝顔を見つめてしまう。

(…あ、睫毛ながーい)
そっと触れたら、少年はピクリと眉毛を歪めた後、再び寝息をたて始めた。
こんなところは、まだ幼い子どもみたいだ。

(そういえば…)
数え切れないほどに私の身体を這い、狂うほどの快楽を与えてくれた唇を見つめる。

キス…しなかったなぁ。
唇と、唇で。
なんか、そんな余裕なかったっていうか、手順踏まなかったっていうか…。

(――この次に、ね)

そう、この次はこんな雨と汗混じりのドロドロの私じゃなくて、きちんとお風呂に入って、いい香りのする私でいたい。
そうして、その次は…。

「あ、あれ?」
楽しい未来を考えていたはずなのに、私の目からは涙が流れ落ちていた。

ずっと、一緒にいたいよ。
いつでも、この温もりに触れられる距離にいたいよ。
でも――…。

乗り越えなければならない壁が、そこにある。


「――う…わぁ!すごい夕焼け…」
ぐっすりと寝ている相模くんをひとり残して社務所を出れば、辺りはもう、山の向こうに沈もうとする夕日に包まれていた。
周囲を囲む林からは、まるで、シャワーのように降り注ぐ蝉時雨。

夏の終わり。

「きれいだなぁ…」
思わず、呟きが零れた。

――孤独で、誰からの温もりも知ることのできなかった今までの私の人生。
それは、この目に映る全ての景色も人も、色を亡くした淋しいものだった。

でも、今は違うの。

生まれて初めて目にした、この鮮やかな茜色の空を私は――きっと一生、忘れない。

「…恥ずかしいから、先に帰ってるね」
閉じた扉、その中にいる人へ向けて小声で声を掛け、私はひとり『さくらだ』への道を歩き始めた。




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