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とある夫婦のカタチ
【若奥さん 官能小説】

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麻生家 肉食な嫁-2

玄関を開けた麻生凛(アソウリン)は、リビングの扉から漏れる灯りに、ヒールを脱ぎながら小さくため息をついた。先ほどの余韻に浸ったまま眠りにつきたかったが、そうは問屋が卸してくれないらしい。

「ただいま。」

「おかえり。夕飯、凛の好きなハンバーグ作ったよ。それともお茶漬けのほうがいい?」

ソファで犬とくつろいでいた夫は、日付が変わってから帰ってきた妻を責める訳でもなく穏やかに尋ねてくる。

「んー、カロリーは気になるけど、京ちゃんの作ったハンバーグ食べたい。」

彼の作るハンバーグは、どんなレストランで出されるものよりも絶品でこの世で一番おいしい食べ物だと自信を持って言える。

「あいよ。焼いとくからお風呂入っておいで。」

「はーい。」

いい夫、だ。共働きだが、家事は率先してやってくれる夫なんてそうそういないよ、と周囲にも言われる。さすがに今日のような理由で遅く帰ってくるのは気がひけないわけではないが、フルタイムで働いて残業もバリバリこなせるのは、やっぱり彼のおかげなのだ。こうして帰宅の遅い妻の帰りを文句一つ言わずに待ち、夕飯の用意までしてくれる夫。やっぱりこの男と結婚したのは間違いではなかった、と思いながらもシャワーを浴びながら思い出すのは先ほどの高坂聖(コウサカヒジリ)との激しい交わりだった。

初めて会ったのは今から10年以上も前。当時学生だった凛にとって電車で助けてくれたスーツ姿の高坂はものすごく大人に見えた。今も当時も若々しい外見の高坂だが、実際は親子に近いほど歳が離れている。身体を許し、女としての喜びをしっかり教え込まれた後、既婚者であると知った。当時はまだ純粋で、見たことのない妻に対しものすごい罪悪感を感じ、すぐに会うのをやめ、連絡先も消去した。

勝手に傷ついて男性不信になりかけていた凛を癒してくれたのが、卒業後就職した会社の先輩だった今の夫、麻生京介(アソウキョウスケ)。高坂ほどではないが歳の離れた夫はやはり大人に見えたし、とても大事にしてくれた。でも今でいう草食男子の夫は、高坂によって開花されてしまった凛の身体を満たしてくれることはなかった。

それでも幸せだった。女性としゃべるよりも動物といるほうがいい、と公言する夫は、高坂のように浮気をする心配もない。一緒に働いている頃から同僚と飲みに行くこともほとんどなく、まっすぐ出勤し、まっすぐ帰宅する夫。共働きを望んだのは夫のほうだった。
妊娠・出産をきっかけに退職。生まれた娘が1歳になったのをきっかけに再就職先を探し、乳児を抱えているにもかかわらず拾ってくれたのが今の職場。その本社の人事部に昔の男が勤務していたことなどすっかり忘れていた。
数年後の人事異動で支店長として目の前に高坂が現れたときは、心臓が止まるかと思った。それでも数ヶ月は何事もなく穏やかに過ぎていった。もう10年も前のことだ。一時の気の迷いで手を出した若い女のことなど覚えていないだろうと思っていた。


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