第２章 落とし穴-2
【あぁ……ダメ、ダメ……いっちゃうぅっ……】
さっき撮ったばかりの由紀の痴態が携帯から流れ出した。
画面は小さく、音声も荒いが、ついさっきのことを思い出させるのには十分だったのだろう、由紀の顔色が変わるがはっきりと分かった。
和夫の顔がニタ〜っと卑猥に歪む。
「へへへっ、これって、奥さんだよね」
「これって……」
由紀が動揺し、うろたえているのが和夫にも伝わってきた。
「な、なんで……」
もう、和夫には不安も迷いもなかった。和夫の中にあるのは、目の前の若妻に対する劣情と被虐心だけだった。
「奥さん、中で話しましょうか」
和夫は、由紀の隙をついて玄関の中に入り込むと、断りもなく部屋の中へ上がった。
「あっ、ちょ、ちょっと……」
引き止めようとする由紀を無視して、和夫は部屋の奥へと向った。
リビングに入った和夫は、テーブルの上に置かれたままのパソコン、カメラ、それにマイクを目にした。
「えへへっ。奥さ〜ん、やっぱりね」
和夫が勝ち誇った表情で後ろを振り向くと、由紀が青い顔をして立っている。
「ど、どうして、あなたが……」
由紀が声を震わせながら言う。
「どうしてって？俺の名前は石田和夫。さっき、奥さんとチャットした相手だよ」
「えっ……」
言葉を失い、唖然とする由紀。しかし、次第に話が読めてきた様子であった。
「しかし、偶然ですよね〜。チャットで同じマンションの奥さんと会えるなんて」
「…………」
「しかも、大人しそうな奥さんが、本当はあんなにスケベだったなんてねぇ〜」
和夫は言いながら興奮してきて、ニタニタと顔を歪ませながら、由紀に近づいていく。
「な、なんですか……」
後ずさる由紀。しかし、すぐに壁に阻まれ、壁を背にしたまま怯えた表情で和夫を見つめている。
「俺さあ〜さっきのチャットで抜いてないんだよね〜。奥さんが余りにも凄くってさあ〜、そんな余裕なかったんだよぉ〜」
和夫は、ショートパンツの膨らみを手で撫でながら由紀に迫る。
「だからさあ〜、一緒に、さっきと同じことしようぜ。ハァ……ハァ……奥さんだって、こういうの好きなんだろう？」
和夫の手が由紀の腰を撫で回し始めた。
「いやっ！触らないでっ！！」
由紀が悲鳴を上げ、和夫の手を払いのける。それは、妻としての貞操を守るという意思に、生理的に受けつけない相手に対する強い拒絶をも示す態度であった。