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異界幻想
【ファンタジー 官能小説】

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異界幻想ゼヴ・ラショルト-20

「……私にも?」
「お前だからこそ言えないって……そろそろ黙れ」
 再び体を密着させると、深花は物憂げなため息をつく。
「……体、冷えてるね」
 追及を諦めたのか、深花は違う話題を口にした。
「まぁな。冷たいから、あっためてくれ」
「ん」
 深花は首に腕を回し、より体をくっつける。
 滑らかな肌は、ほのかにフラウと同じ匂いがした。
「ジュリアス……」
 謝罪を含んだ低い囁き声に、ジュリアスは抱き締める腕に力を込める。
「もう気にすんな。ティトーが、手を打ってくれる」
「ん……」
 それからしばらくして、ふっと深花がくずおれる。
 規則正しい呼吸は、眠りに入った事をジュリアスに知らせた。
 まだまだ軍に慣れない女にとってクゥエルダイドが欲望に駆られた事から始まった一連の出来事は、かなり神経を擦り減らした事だろう。
 いや、並の女なら擦り減らすどころかとっくに擦り切れているはずだ。
 弱音も吐かずにここまで頑張って、見上げた根性の女だなと思う。
「おやすみ、深花」
 ならばせめて今だけは、ぐっすり休んで英気を養っておいて欲しいと思った。
 眠る深花を起こさないよう慎重に、二人とも楽な姿勢に体を入れ換える。
 深花が次に目を覚ます時までは、こうしていられるのだ。
 ほんのり温かい肉体を抱きながら、ジュリアスはまどろみに引きずり込まれていった……。


 翌日。
 神機パイロット・ジュリアス少尉による神機パイロット候補生クゥエルダイド殺害に関する軍法会議が、司令官室に程近い会議室にて開かれた。
 裁判長は、ガルヴァイラ中将。
 裁判官としてザッフェレルとラザッシュやアパイア、クゥエルダイドの上官に当たるアルコーキル少佐が参加する。
 ジュリアスの弁護には、ティトーが立った。
 この世界、弁護士という職業は存在しない。
 だから弁の立つティトーが、ジュリアスの言い分を主張するのだ。
「被告側は完全無罪を主張……したい所ですが、さすがにそれは不敵すぎる。心神耗弱による罪状軽減を要求します」
 一発パンチを食らわせてから、ティトーは畳み掛ける。
「被害者クゥエルダイドが深花曹長に不適切な関心を抱いていた事を、自分は証明する用意があります」
 ティトーは、懐から何かを取り出した。
 黄色い石と、それを首から下げるための革紐。
「現在は深花曹長が保有する宝石です。自分は曹長を通じてバランフォルシュと交渉し、曹長の記憶を借り受けました。これからお見せする物は曹長が見聞きした一連の出来事ではありますが、曹長自身による記憶違いや改変などがない事実ありのままである事をバランフォルシュが保証しています。では、これをご覧いただきたい」
 ティトーは、宝石を握った。
 まばゆい光が手の平から溢れ出し、壁に映像を投影する。
 木刀を振るっているクゥエルダイドが、大写しになった。
 何かを思いついたらしく、その顔には邪な笑みが張り付いている。
「これは先日行われた、我々神機チームと神機パイロット候補生達による交流戦の模様です。曹長と候補生クゥエルダイドはこの時初めて出会い、対戦しました」
 クゥエルダイドの木刀は執拗に手元を狙い、さんざんに打たれて痺れが回った深花の手は木刀を取り落とした。
 木刀を捨てたクゥエルダイドがぐっと接近してきて、深花の体を背後から捕らえる。
「ここまではまあ、百歩譲って試合の延長としましょう。問題はこの後です」
『きゃっ』
『おぅ……曹長、あんたいい匂いがするなぁ』
 深花の視線が南下し、自分の体を見る。
 練習試合という事もあって、深花はシンプルな薄いシャツとパンツ姿だ。
 そのシャツに腹の所からクゥエルダイドの無骨な手が侵入し、さわさわと腹部を撫で回し始める。


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