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『快楽と縄』
【SM 官能小説】

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『快楽と縄』-2

2.アタシの女のプライド

 アタシは今、40歳くらいも年上のジイサンを旦那様と呼び、ジイサンの愛人になっている。
 だが、アタシの意識としては、愛人になってやっているのだ。
 「億ション」と呼ばれる高級なマンションにタダで住まわせてもらい、月々同じくらいのOLが羨むくらいの額のお手当を受け取っているけれども、ジイサンがそう思いたがっているように「囲われている」なんて、絶対思わない。

 それはアタシが、アタシの女としての魅力でジイサンをメロメロにして、ホステスをしていたアタシにそれこそ三拝九拝して「わしの愛人になってくれ」と懇願させ、条件として今述べたことを要求して呑ませたからなのだ。
 アタシは十代になってすぐからずっと意識して、女としての肉体的魅力を磨いてきた。
 体型、ヘアスタイルそれにメイクにだって自信があるし、ファッションもいつもバッチリ決めている。
 だからこれまでずっと、街を歩いていて振り返ったりして見つめられることはザラだし、どこにいっても男たちの視線を身体に体に感じないことはない。
 
こんなアタシが、いくつか仕事を変えた後ホステスになったのは、当然の成り行きだった。
 ホステスこそが、女としての肉体的魅力でガチンコ勝負できる、恰好の職業だからだ。
 肉体的魅力だけでなく応対においても客を引き付ける努力をおこたらなかったので、アタシはいつも好成績を上げ、何度も格上の店に引き抜かれのだ。
 そして最後にいた店で、客としてきたジイサンと出合った。
 
ジイサンが願ってもない上客だとすぐに見抜いたアタシは、手練手管の限りを尽くしてジイサンにサービスしてやった。
 有頂天になったジイサンは、たちまちアタシに首ったけになった。
 そして、アタシを落して愛人にしようと、あの手この手で迫ってきた。
 そんなジイサンの波状攻撃をかわしたりあしらったりしてじらし、条件をアタシが十分満足できるまで吊り上げてからやっと首を縦に振り、今こうしてジイサンの愛人になっているのだ。

 だから、ジイサンとしてはアタシを愛人として囲ったと思いたがっているようだが、アタシにしてみれば決して囲われたりしているつもりなんかない。
 高級マンションに家賃を払わず住めることや破格のお手当を毎月もらうことは、あくまでもアタシの女としての魅力を独占させてあげることに対する、当然の対価なのだ。

 だから愛人になってからもアタシは、その対価として支払う重要な部分であるセックスにおいて、つねにアタシがリードして優位性を保ってきた
 正直言って相手はなんといっても年寄りなのだから、30をすぎたばかりのアタシには相手にとって不足過ぎて、アタシがイイ気持になったり感じたりすることはほとんどない。
それでもジイサンを喜ばすために、精一杯演技をして感じたりイッタりしたふりをしてあげた。

 そして半年くらいは、ジイサンはそれで十分喜んでいたのだが、そのうちどうもアタシが演技で感じたりイッタりしているのを悟ったのか、それまでは毎回のように果てていたのに、だんだんとそうはいかないようになっていった。
 そのことで落胆の様子をみせるようになったので、アタシは慰めたり励ましたりしてジイサンのご機嫌をとってやった。

 アタシはそれが功を奏していると思い込んでいたのだが、あの日突然アイツが出現したことによって、アタシのジイサンに対するセックスにおいての優位性は、一気に崩されてしまうことになったのだ。




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