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不確かなセカイ
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不確かなセカイ-8

私は、気分を落ち着かせるために二本目の煙草に火をつけた。くわえている煙草が震えて、なかなか火がつけられなかったのは、多分、気のせいだろう。
「もっと分かりやすく言ってくれないか。」
「言葉通りの意味さ。創られた箱庭のなかで生活する気にはなれなかった。」
「それじゃ、やはりここは・・・。」
くらり、と眩暈がする。立っていることさえ困難で、よろよろと近くのベンチに腰を沈めた。
「そう、ここは・・」
言うな。言わないでくれ。ミシミシ、と世界が軋む。翔太は紅い、紅い夕日を背中いっぱいに受けて
「創造上の世界だ。」
と言った。
あぁ、そうなのだろう。
ここがこんなに幻想的な風景をしているのは、なんのことはない、まさに幻想そのものだったからだ。崩れていく。絶対なんてものはどこにも無い。だから目の前の翔太は、蜃気楼のように揺らいで拡散していく。
それを不思議に思う私は、もうそこにはいない。
何てことだ。
私たちは、こんな不確かなセカイに生きていた。
翔太は消え際にこう囁いた。
――― あなたの幕もすぐ下りる

 呆然と夕日がその役目を終える様子を見つめていた。何をする気も起きなかったし、何をするべきかも分からなかった。翔太の言ったとおり、私たちは掌の上で踊らされている駒にすぎなかった。でもだからと言って、私が何をできるのか、それさえも思い浮かばない。七本目の煙草の半分が灰に変わるころ、携帯が鳴った。
「もしもし」
「先生ですか。」
「あぁ、君か。」
相手は、世界の創造主。
「昨日はすまなかった。どうやら私は、」
「先生、僕は間違っていたよ。」
「えっ?」
「今から・・・来れますか?なるべく早く。」
「今からか。」
全く気乗りはしなかった。今は自分のことで手一杯だから。それでも私は向かわなければならない。この一言を聞いてしまったから。
「早くきてほしい。僕は、もう消える。」


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