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匂いフェチ
【女性向け 官能小説】

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匂いフェチ-3

抜き終わるとベッドの上のボックスティッシュから数枚を取り出し、ショーツの中へ突っ込んで陰部を拭う。
ゴミ箱に入れなきゃと思っているが、予断のない私の睡魔はもうすぐ側まで来ていた。結局そのままグッスリ眠ってしまった。

いわゆる“ラブジュース”。それのついたティッシュを手にしたまま眠ってしまったからかどうか、私はとても卑猥な夢を見た。
明け方の4時に目が覚めると、ショーツの内側が、信じられないくらいに濡れていた。
こりゃ穿き替えるしかないなと思ってそいつを足から抜き取り、タンスの引き出しから新しいものを取り出して穿く。オシッコがしたかったのもあったから、面倒臭かったが汚れたものを掌に丸めて隠して下へ持ってって、洗濯機の中へ放り込んだ。

明け方に見る夢は叶うという。
迷信や占いの類を一切信じない、年齢の割に可愛げのない私だが、その時ばかりは信じてやってもいい気がした。ガッコウから帰宅すると、玄関先、脱ぎ捨てられた靴の横に、ちゃんと揃えてこっちを向いた真新しいスニーカーがあって、誰だろうと思ってリビングを覗くと、森山先輩だった。
一泊研修から戻ったという彼は、兄にカバンを返しに寄ったのだと言う、ナイス兄。
母が作る料理を囲んで一緒にビールを飲み、少し酔っぱらって饒舌になってすっかり仲良くなった私たち。
森山先輩はそれから何度となく家に遊びに来るようになって、一緒にバーベキューに行ったり母がもらったチケットで相撲を見にいったり兄の試合を見に行くようになったりして、私と彼とは徐々にその距離を縮めていった。
ドライブに誘われて、当日になって二人きりだと知って緊張しまくって話しが続かなくって行き付けの店だと連れて行ってもらったイタ飯店では料理もこぼしまくったが、帰り際に車の中でキスをされた。
もっと強引にゴリゴリ来てくれてもいいのになあー、私は余りの嬉しさにクッションを抱き締めてバフバフやりながら、慌てない慌てない、ひとりニヤニヤ笑って幸せいっぱいの気分になった。ヘソが90度くらいに曲がってる私も、彼の前に行くと可愛いらしい乙女ちゃんになるらしい。刺激的な恋愛もいいけど、どちらかと言えば寡黙で大人な彼に優しくエスコートされるのもとても心地が良く、幸せだった。
その後私たちはセックスをして、若いからそれなりに刺激的なこともたくさんして、でもローターを付けてコンビニ行くなんてダイナミックなことはしなくって、ちょっと目隠しされたり腕をスカーフで縛られたり恥ずかしい言葉を言わされたりそんな感じで、でも愛をたっぷりと注いでくれる彼とのセックスは、ホントに気持ち良くって最高だった。
私が大学を卒業して、テキトーなところに就職してOLやって、あっという間に適齢期と呼ばれる年になると、彼は私にプロポーズをした。当然私はオッケーをした。

私たちが結婚を報告すると、まるでそれを待っていたかのように兄たちカップルも結婚式の日取りをそそくさと決めた。母は一度に淋しくなると嘆いたが、お互い近くにマンションを借りて住むことにしていたから大丈夫だとなぐさめた。
引っ越し先のマンションで段ボールを解く。自分の物だと思って開いたものが彼の物で、私は少し迷ってから、彼の部屋から来たその中身を、一つ一つ丁寧に手に取って眺めた。私の知らない彼の過去。これからは一緒に作っていくんだ。私は自然と笑顔になっていた。
箱の一番奥に少し大きめのオルゴールがあって、私はそれを手に取った。前に付いた引き出しのつまみを引っ張ると、かわいい音が鳴り始める。引き出しの中には小さく丸まった布きれが入っていて、私はなんとはなしにそれを指で摘んで引っ張り出し、中を確認した。広げてみると、それは私のショーツだった。
遠い昔、私が持っていたお気に入りのやつ。どっかに行ってしまって探したんだけどなくって、ああ失くしちゃったんだとかなりショックを受け悔しがったから、そうしてたまたま覚えていた。
私のたくましい想像力が、段ボールと手荷物で散らかった部屋の中にムクムクと沸き出し、そこで物語をパチンと繋げた。
おい兄よ、君が彼にバッグを貸したというあの日、こいつがテクテクと足をつけて、そのバッグの中へ忍び込んだというのかい?
細かい事情や動機の部分までは定かじゃない。だけどなんか腑に落ちた。テトリスのあの棒みたいなヤツがはまってドカーと消えるみたいな爽快な感じ
ミョーな部分で繋がってたんだなーと思っておかしくなる。私は夕暮れの部屋の中で一人ケタケタと笑った。
オルゴールは、ビートルズの『I Want To Hold Your Hand』を奏でている。


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