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続・幻蝶
【フェチ/マニア 官能小説】

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続・幻蝶(その2)-1

「…ミイラ化とは、罪に犯された魂を、肉体の中へ永遠に封じ込める方法であると言われている
が、私はそうは思わない。

愛すべき人よ…この地上にあって、あなたの肉体ほど至福に充ちた悦びと輝きを私に与えたもの
はなかった。そして、私はあなたの美しすぎるすべてのものを、永遠に自分ものとする方法を発
見したのだ。

主よ… それが、どうして神に背いたと言えるのか… 」(サフラーナ修道士の書簡より)



ヤスオは朝から仕事でローマに出かけた。
私はひとりで館から一時間ほどかけて山の斜面を散歩していた。荒涼とした岩肌が剥き出しにな
った小高い丘にたどり着く。眼下には、黄昏に包まれた地中海が、きらきらと深い群青色の輝き
を水平線まで散りばめている。灰褐色の崩れかけた古代ローマ時代の白い遺跡が点在した尾根が、
葡萄畑の先へと続いていた。

下着をつけない肌に洗いざらしのワンピースが心地よかった。性器の表面を撫でるように乾いた
風が吹き込んでくる。


昨夜のことだった…。

「抱いて…」と、私の部屋から出て行こうとするヤスオの背中に、少しお酒に酔った私は、小さ
く声をかけた。私は館に滞在しながらも、ヤスオから一度もからだを求められることがなかった
のだ。

振り向いたヤスオの前で、わたしは衣服を脱ぎ捨てた。薄い下着がはらりと床に落ちると、私は
すべての肌をヤスオの前に晒した。燭台の淡い灯りの中で、ヤスオは、私の裸体をじっと見つめ
続けていた。

「…お願い…抱いて欲しいの…」

私は自分で自分の言葉が信じられなかった。目の前に立っている男が、あのときのヤスオであっ
てヤスオではなかった。彼の憂いを湛えた瞳が、私の性器の中に忍び込んでくるようだった。
何か得体のしれない深さを増していくヤスオの眼を見ていると、不思議な欲情の重みを私は感じ
るのだ。

でも、結局、ヤスオは軽く笑みを浮かべたまま、私の髪を優しく撫で、頬にキスをしただけで、
部屋を出て行った。



ヤスオは、毎週仕事の関係で二日ほど館を空けることが多い。ヤスオの仕事はおもに蝶のオーク
ションの仕事のようだったが、私は詳しく尋ねたことはなかった。
ヤスオをもっと知りたかった…。どこか謎に包まれたようなヤスオを、私はもっと知りたかった
のだ。


今夜から、ヤスオはまた仕事に出かけた…。

彼が決して入ることを許さなかった部屋に、私は入る決心をした。その部屋は館の北側の奥深い
廊下の突きあたりにある。

入ることを禁じられたその部屋の色褪せた重い木の扉を私は開ける。


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