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七ノ森学園♂♀騒乱記 -咲けよ草花、春爛漫-
【性転換/フタナリ 官能小説】

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-続・咲けよ草花、春爛漫--6

3. ボーイ・ディスライクス・ボーイ

『芹沢先輩が男――っ!?』
『ちょ、函部っ』
俺が本当に男ということを知った函部はかなり衝撃を受けたようで、嘘だ! なんて言葉を吐きながら部室を飛び出してしまった。その後を追おうとする俺を諌めたのは御形先輩。先輩は後のフォローは任せてと例ののんびりした口調で言って、彼女を追って行った。
うう、俺が悪いんだろうか!? なぜか心に生まれる罪悪感。だが、考えてみると俺が何をしたってわけでもないのだ。女子の考え――というか函部の考え――は分からん。
で、俺は今サークルC棟の階段に腰掛け、蕪木に例の経緯をもう少し詳しく話していた。
黙って傍らで俺の話を聞いていた蕪木だが、話が終わった後もやはりだんまりだ。
もともとわいわいと騒ぐ方ではなかったが、さすがに何かリアクションがないと虚しくなる。
「笑いたきゃ笑え」
俺は溜息をついて、投げやりに言った。
「別に中学時代の奴らに言ってもいいぜ。どうせ信じないだろうしな」
「言わないですよ、そんなこと」
俯いたままで言って、蕪木は再び黙り込む。
困った俺は別の話題を切り出した。
「な、なあ、野球は?」
野球は小学校から始めたと以前に聞いたことがある。中学一年であれだけできた奴だ。当然三年間続けてきたことだろう。それにもかかわらず、何故七ノ森を受けたのか。うちの野球部はよくて中の下、決して強いとはいえなかった。
「野球部に入らなかったのか?」
「野球は」
蕪木はそう言って、小さく息をついて続けた。
「……俺、肩壊しちまって。もう投げられないから、他の部に入ろうと決めてたんだ」
野球の盛んな四ツ木学園に推薦をもらった直後のことだったという。医師の診断では、生活に支障はないが本格的に野球をやるのは難しいとのことだ。
野球ができないということで推薦は取り消し、その時点で入試を受け付けていたのは七ノ森くらいだったという。
家から通える距離ではないため、現在は俺と同じく寮暮らし。両親も、新しい土地で何か新たに打ち込めるものを見つけられたらと、寮暮らしを承諾してくれたそうだ。
「野球が嫌いになったわけじゃない。でも、中途半端に野球をやっていても、自分が傷つくだけだから」
「……それは、悪かった」
言うと、首を横に振る蕪木。俺はまずいことを聞いてしまったと反省する。しかし、ここで同情したって仕方ない。俺は努めて明るく冗談交じりに言ってやる。
「それでうちに、ね。お前ならもっと普通の真面目なサークルの方が合ってると思うけどな。茶道部とか、可愛い子たくさんいるぜ」
七ノ森の茶道部は美人揃いで有名だ。新歓での茶道部ブースには、女の子だけでなく男も群がっていた。
不意に蕪木は顔を上げ、ちらりと俺を見やった。
「芹先輩」
「ん?」
しかし何も言わず、黙り込んでしまう。
「蕪木?」
「……いや、何でも。それに」
首を傾げて先を促す俺を見つめ、蕪木は微かに笑みを浮かべて言った。
「それに、やりたいことは他に見つかったんだ」
「やりたいことって」
「ミハル!」

俺の声は、そんな鈴代の呼び声に掻き消された。
俺はあからさまに顔を顰めて鈴代に言う。
「何だ」
「何だとはなんだ。今日は部活これで終わりだっていうから、買い出し行くぞ」
その言葉に俺はあっと声を上げる。
そういえばこいつと、新入部員の歓迎会の買い出しにいくことになっていたのだ。
「悪い、蕪木。俺そろそろ行かなきゃ」
立ち上がる俺を見上げ、蕪木は何かを言いたそうに口を開いたが、またすぐに閉じて頷いた。
そんな蕪木と俺とのやりとりを見ていた鈴代は、何やらにやけた笑みを口元に湛えている。
こいつがこんな表情を浮かべる時は、決まってよくないことをやらかす時だ。
俺は鈴代を睨みつけた。


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