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七ノ森学園♂♀騒乱記 -咲けよ草花、春爛漫-
【性転換/フタナリ 官能小説】

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-続・咲けよ草花、春爛漫--4

2. ガール・ライクス・ガール

「はじめましてっ!」
背の低い、長い髪を二つに結った可愛らしいその女子はそこらのアイドルと見紛うようだった。
高い声で挨拶する、文藝研の新入部員のひとり――函部由里菜(はこべゆりな)。小さな顔に大きな瞳、細い手足。男共は愛らしく小首を傾げる様子にへらっとした笑みを浮かべる。
「よろしくお願いします♪」
もちろん例外なく俺の頬も思わず緩んだ。
「よろしくー、函部ちゃん」
御形先輩は握手で函部を歓迎し、椅子に座るよう促した。
「もうひとりの新入部員君は遅れてくるから、それまで簡単な文藝研の紹介をしておくねー」
それから先輩は、七ノ森には文学部と文藝研があり、双方の活動内容や文藝研の部員構成などを説明する。ぶっちゃけていうと、この人が真面目に部活をしている姿を俺は見たことがない。文学部のように季刊誌を出しているわけではないから、まあ仕方ないのかもしれない。
だからこんなふうに彼がサークルの説明をしているのは新鮮に感じられた。
「どうしたのー、ミハルちゃん」
「え? ああ、いえ」
思わず御形先輩のことを見つめていた俺は、先輩の声ではっとする。
何でもないと首を横に振る俺に、先輩は揶揄するように言う。
「何だー、熱い視線で見つめられちゃったら照れるよー」
「別に先輩が照れるような思いを込めて見てたわけじゃないっすけどね」
「つれないなー」
口を尖らせる御形先輩からは視線を逸らすと、俺を見ていたらしい鈴代と目が合った。
奴はにやりと口の端を持ち上げる。
「そこがいいんですよ、ミハルは」
「鈴代君、ミハル君にゾッコンだもんね」
笑いながら言うことじゃないだろ、小日向!
俺が心の中で突っ込んでいると、鈴代はあろうことか小日向の肩に手を回して言った。
「俺がゾッコンなのは、ミハルだけじゃないけど?」
「止めろ色魔」
そう言って鈴代を横からどついてやると、暴力も愛情表現のひとつだとか何とか抜かしてきやがる。
(本当にこの男は……)

「芹沢先輩」
「!」
鈴代を睨みつけていると、函部の高い声が俺を呼んだ。
「先輩は、お付き合いしている人がいるんですか?」
「は、俺?」
突然の質問に、俺は目を瞬かせた。
そしてはっとする。

『安心して。一目惚れって言ってたのは女の子の方だから』

昨日の小日向の言葉を思い出す。
俺に一目惚れして入部したという女の子。それが、この函部――?
「彼氏がいるんですか?」
「や、彼氏はいないけど……」
この格好してりゃその質問は違和感のないものかもしれないが、俺にとっては相当な違和感だ。
彼女はじろじろと、俺の頭からつま先までを眺める。
「やっぱり、決めた!」
次の彼女の言葉に、俺は固まる。
「由里菜を、芹沢先輩の彼女にしてくださいっ♪」
ぺこりと頭を下げる函部。その面を上げる瞬間、獲物を射るような目が俺に突き刺さる。
俺だけじゃない、文藝研の皆もまた固まっていた。どうリアクションしていいか分からないと言った様子で、とりあえず引き攣った笑みを浮かべて。
「えーっと」
御形先輩はへらへらと笑みを浮かべながら俺の肩を掴み、函部に問うた。


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