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七ノ森学園♂♀騒乱記 -咲けよ草花、春爛漫-
【性転換/フタナリ 官能小説】

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-続・咲けよ草花、春爛漫--14

6. ビー・ケアフル

「まーた桑名の奴、部活優先させてんねや」
「そう。おかげですっかり俺が体育祭実行委員だと思われてるよ」
体育祭まであと一ヶ月。体育祭実行委員全体から、各団に分かれて集まり、具体的な作戦や応援について検討する段階になった。
それにもかかわらず、我が2-Bの実行委員である桑名は今日もまた俺に代理を頼んできやがった。
今週末が練習試合のため、今日の部活は外せないのだとか。
「ええやん。俺はミハルと一緒いられて嬉しいわ」
「紺野、お前な……」
俺は顔を引き攣らせて傍らを歩く男に言った。
紺野一(コンノハジメ)――2年A組で、体育祭では俺達B組と同じ赤団の体育祭実行委員。
関西生まれ関西育ちで、中学卒業と同時にこちらへ引っ越してきたのだという。かなり調子のいい奴だが、関西なまりと気さくな性格は上にも下にも受けがいい。
俺ももちろん嫌いじゃない。けれど。
「調子いいこと言うけどな、俺は男だって言ってるだろ。そんなこと言われても気持ち悪いだけだぞ」
「えー、だってやっぱ可愛えもん。俺、お前が男やった頃は全然知らんしな。今年のミスコンはミハルが本命やいう話もあるし」
「何だそりゃ! 勘弁してくれよ」
学園祭のミスコンのことだよな? 出られるわけないだろーが。
誰が広めたのやら、この身体になってから知らないところで色々な話が飛び交っていて、困惑する。
「でも、可愛え可愛え言われて悪い気はせえへんのやろ?」
「ま……」
うう、そうなんだ! だってそりゃ、悪い気なんてしないだろ。
だけどそれと男に言い寄られたりミスコンに出たりするのはまた話が違うわけで。
こめかみを抑える俺に、紺野は天井を仰いで言った。
「しっかし、桑名もずるいわな。ミハルがおるからって部活の方行くなんて。俺かて部活休みたないのに」
「紺野も運動部だっけ?」
俺が問うと、紺野はにっと口の端を吊り上げてみせた。
「うん、剣道部。年季入ってんでー、小学生から続けてんねん。今度試合見にきてや」
「おう。お、ここだ」
俺も笑顔で答え、揃って集まりが開かれている3-A教室へ入って行った。


今日の会議の内容は、応援合戦についてが主だった。
去年は先輩の体育祭の気合の入れようにただただ圧倒されるばかりだったが、今年は自らが盛り上げる立場だ。一年生にいいところを見せたいって気持ちも分かる。
3-A教室から自分の教室へ戻る道を歩きながら、俺は頭を悩ませていた。
「次回の集まりまでに、どんな応援にしたいか最低一案持ってこい、か。桑名どうする気かな……」
「LHR(ロングホームルーム)使て、適当に皆に案を出させたらええやん。俺はそうする」
紺野の言葉に俺はなるほど、と頷いた。
「けど、クラスのみんなにも考えてもらうにしたって、何かしらこっちから出さんとな」
「……紺野、もしかして考えてあんの?」
あまりに飄々として言うので、俺は訊いてみる。
紺野は当然というふうに頷いてみせた。
「げ、マジかよ」
「そんな大した案やないで」
苦笑する紺野。俺は腕組して悩む。
桑名に相談してもいいが、明日の授業は奴とあまり被っていない。今週は昼休み返上で部活だと言っていたし、LHRまでに話す時間はないだろう。
「桑名に丸投げすると危険なんだよな。仕方ねーか、俺の方でいくつか考えておかないと」
「何や、それなら俺の案をB組の皆に伝えたらええよ。同じ団やし、A組はこんなん考えとるでーって」
「紺野……!」
なんていい奴!
俺は思わず紺野を拝む。こいつが上級生下級生に限らずモテるのも分かる気がするぜ。
「ありがとな。こういう、企画とかは苦手でさ」
「構へんよ」
「いや、本当助かる。あ、紺野チョコ好き? 昨日新歓で余ったお菓子が残ってるんだ。お礼にやるよ」
俺はそう言って、2-Bの表札が見えると歩く足を少し早めた。


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