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異界幻想
【ファンタジー 官能小説】

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異界幻想ゼヴ・アファレヒト-20

「あたしの宿敵、対存在……いなくなったから、心配してたのよ……」
 うっとりと、少女は言葉を紡いだ。
「リオ・ゼネルヴァにいなきゃ、あんたを殺す事ができないんですものねっ!!」
 ひひひひひ、と男が笑う。
 深花ではない、違う誰かを見て……何事かを呟いた。
「!」
 三人の影像が、急にぶれる。
「っと……さすがに体力の消耗がきついな」
 大男の頬が、こけ始めている。
「だが……今ここで、ミルカを殺せば……」
 影像が消え、三体の神機がそれぞれ戦闘体勢に入った。
 突然の襲撃に度肝を抜かれ、うろたえていた城内の人間の中で一番最初に冷静を取り戻したのは、ザッフェレルだった。
「な……」
 一度冷静を取り戻したザッフェレルは、敵三人が喋っている間に矢継ぎ早に指令をがなりたてる。
「何をしておる近衛兵!陛下方を安全な場所まで退避させよ!」
 雷に打たれたように、硬直していた近衛兵達は王族を避難させ始めた。
「民間人!訓練通りに、この場から逃げよ!」
 着飾った人間達が、悲鳴を上げながら出入口へ殺到する。
「騎士団長!戦力を編成し、城を防衛せよ!」
 敵神機を眺めたまま呆然としているサマレフェロアに対し、ザッフェレルの雷が落ちた。
「何をしているサマレフェロア訓練生!吾輩の指令が聞こえぬか!!」
「り……了解しました、軍曹殿!」
 おそらく反射的に返事をした後、悔しそうな顔をしながらサマレフェロアは配下に命令を飛ばし始めた。
「ティトー!フラウ!ジュリアス!神機召喚を許可する!これ以上の敵戦力の侵入を阻止せよ!」
『了解!』
「深花……主はレグヅィオルシュに乗れ!」
「はいっ!」
 四人は、宴会場に面したテラスに出る。
「カイタティルマート!」
「マイレンクォード!」
「レグヅィオルシュ!」
 それぞれの神機を召喚しながら、三人はテラスからダイブした。
 ジュリアスに抱えられた深花は、ぎゅっと目をつぶる。
 機体を召喚しながら中に入り込み、神機を纏うのだ。
「そうこなくっちゃなぁ」
 嬉しそうに、大男が笑った。
「レグヅィオルシュとミルカですって?まあまあまあ……そっちのミルカで、対処しきれるかしら?」
 少女が、くすくす笑う。
「いいだろう……行くぞ!」
 男の声を合図に、二つの神機が飛び出した。
 ティトーが腕を振ると、こちらの背後で風が渦を巻く。
『シールドを張った!被害は気にするな!』
 ティトーの声に、ジュリアスは唇を歪めた。
「つまり、シールド維持でお前は動けなくなったと」
『あっちもエネルギー供給で動けないわ。互角……に近いわよ』
 フラウの声に、今度は眉間に皺が寄る。
「なるべく早く済ませる。持ちこたえてくれよ」
 ふふ、とフラウが笑った。
『期待しないで待ってるわ』
 二機それぞれが、互いの対存在と組み合った。
「王城まで飛んでくるたぁ、いい根性してるじゃねえか……!」
 不吉な音を立てて、機体が軋む。
「ぐっ……!?」
 ジュリアスが苦痛の声を上げるのを、深花は聞いた。
 絡み合った手の平から、異常な量の湯気が立ち上っている。
「ぐぅ……!」
 濃硫酸でもぶちまけられたように、互いの手が……装甲が溶け合い、浸蝕しあっているのだ。
「っ……ぅらあ!」
 一瞬力を溜め、ジュリアスは気合いで敵神機を押し退ける。


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