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異界幻想
【ファンタジー 官能小説】

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異界幻想ゼヴ・アファレヒト-21

 慣れ親しんだものとは異なる空気で活動限界が近いのか、敵レグヅィオルシュは急に動きが鈍くなって片膝を突く。
『っうぐ……あ、あああっ!』
 苦しげなフラウの声が聞こえ、ジュリアスはそちらを振り向いた。
 異常な光景に、一瞬言葉を失う。
 敵マイレンクォードが、フラウ機を食っていた。
 装甲の間から筋糸が伸び、隙間から入り込んでマイレンクォードを浸蝕している。
「フラウ!」
 すぐ我に返ったジュリアスは、敵マイレンクォードに向けて強烈なキックを叩き込んだ。
 べりり、と嫌な音と感覚が走って敵マイレンクォードがフラウ機から離れる。
『っあ……た、助かったわ……』
「油断すんな。まだ来る可能性がある」
 かつての自分の行いを棚に上げ、ジュリアスは警戒を促した。
『さすがに、ゼネルヴァにおける活動時間は短いな』
 金色の大男の声が、敵レグヅィオルシュから響く。
 その声は先程に比べると、明らかに覇気がない。
『だが、確信した。ミルカ、貴様の能力は開花しきっていない……まあ、こんな甘ちゃん達に囲まれていては限界まで開く事はなさそうだがな』
『面白い冗談だが……我らのミルカは、お前らごときに全力を出す気はさらさらないとさ』
 ティトーが言い返した後、何事か言いたそうだったが敵神機は再び閃光を発して消えた。
「恐かったのに、よく頑張ったな」
 ジュリアスにねぎらわれた深花は初めて、自分が細かく震えているのに気づく。
「……よく分かったわね」
 強がりを言うと、ジュリアスは苦笑した。
「俺達は今、実際にくっついて肉体・精神共に繋がってるんだぞ?色々な事情を理解してから初めての実戦がどれだけ恐かったか、今は理解できるんだ……お前は心を閉ざす術をまだ知らないから、よぅっくな」
 ジュリアスが手を伸ばし、甲の部分で頭をぐりぐり撫でてくる。
「泣きも失禁もしないだけで十分合格点をやれるぞ。初陣の女兵士は、割とそういうのが多いんだ」


 四人が城内に入ると、ザッフェレルが慌ただしく駆け寄ってきた。
「全員無事か!?」
「何とかな。だが、フラウが……」
 ティトーは、脇に抱えたフラウを一瞥する。
 その顔色は青く、全身が小刻みに震えていた。
「神機が浸蝕されたせいか?」
「いいえ、違うわ」
 首を振り、フラウは否定する。
「敵マイレンクォードのパイロットが、あたしに……言ったの。『見つけた』って……」
 不気味なメッセージに、フラウ以外の全員が顔を見合わせる。
「と……とりあえず!」
 殊更に明るい声を、ジュリアスが張り上げる。
「奴らは撃退できた!しかるべき保護措置もなしで無理矢理こっちに出張ってきてたみたいだから今頃は疲労でダウンしてるはず!当分心配いらないし、今日はとりあえず休もう!ザッフェレル、休んでいいよな!?」
 いきなり話を振られたザッフェレルだが、鷹揚に頷いた。
「うむ。貴族連中はほとんどを家に帰らせたし、王族の方々は部屋へお引き取りいただいた。吾輩はこれから宰相殿と面談せねばならぬ」
「誰がなんと言おうと、俺はとっとと寝るからな」
 一人毒づいたジュリアスは、物問いたげにフラウを見る。
「一緒にいた方がいいか?」
「……いえ、大丈夫。一人で折り合いはつけられるわ」
 うらやましそうな視線を深花に送ると、フラウは首を振った。
「いってらっしゃい」



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