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お兄ちゃんの忘れ物
【家族 その他小説】

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お兄ちゃんの忘れ物-2

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『すぐ慣れるさ。寧ろ最初が肝心だからな、怯まず自分から話し掛けるんだ。構えなくていい、相手は同じ新入生だからな』
「うん。ありがとう。ごめん、いきなり電話しちゃって。じゃ、またね、お兄ちゃんも頑張って」
『おう、明乃も頑張れよ。友達くらいお前ならすぐ出来るさ。じゃあな』


携帯を枕元に置いて、ベッドに背中を投げ出した。

持ってきた荷物も全部運んだし、もうセットも完璧だ。
あとは明後日の入学式を待つだけ・・・


「・・・もうすぐ大学生かあ」


まだ実感は湧かないけど、こうしてるともう高校生じゃないんだな、と思ってしまう。
卒業式の夜に感じたものとは違う寂しさが、私の胸の中に漂っていた。


寂しさはあるけど不安じゃないのは、お兄ちゃんに相談したお陰かもしれない。

寧ろ、私なんかよりもお兄ちゃんの方が不安だろう。
間もなく入社式を迎えて、新しい世界へ旅立っていくんだから、緊張しない理由が無い。

・・・それでも、お兄ちゃんは電話したらすぐ出てくれて、しかも相談相手になってくれた。


「・・・・全然顔見てないなあ。最後に会ったのいつだっけ・・・・」


お兄ちゃんが大学に通うために家を離れて一人暮らしを始めたのは、もう4年前か。
まだ2年生までは長い休みの時は必ず帰ってきていた。
お母さんの料理を美味しそうに頬張って、私にこんな旨いの毎日食えて幸せ者だな、って言ってたっけ。

あの遊び・・・もう大学生になってからはしなくなっちゃったよね。
別にもう楽しくなかったけど、いざやらないとなるとちょっと複雑だった。

3年生になったらもう就活の準備を始めて、確かその年は帰ってこなかったんだ。
それで、4年になって、内定を取ってから凱旋帰宅って形で帰ってきた。
あの時は自分の事みたいに嬉しかったなあ。

「お前、喜びすぎ。相変わらずブラコンだな」と笑われた。

・・・まあ、自分でも薄々そう思ってましたけど。

お兄ちゃんが好きでなんで悪いの?って、ちょっと悔しかったら言い返した。


その後もう一度会ったから、その時以来だ。
凱旋帰宅が夏休みで、次に会った時が確か今年のお正月・・・・・・

はい、ブラコンです。
でも別に変な感情は無い。目の前にいてもドキドキしないし、普通に手も握れる。
特に異性として意識する事はないし、只の仲良しな兄妹だよ。

思い出に浸っていたらお腹が鳴った。
取り敢えず、今日は外に行こう。散歩も兼ねて−



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