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お兄ちゃんの忘れ物
【家族 その他小説】

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お兄ちゃんの忘れ物-1

「あのさあ、お兄ちゃん」
「何だ?言いたい事がありそうだな、明乃」

今にも笑い出しそうなお兄ちゃんに向かって、教科書に挟まっていたメモ用紙を見せた。

「読んで、これ」
「¨今日は2人とも遅くなるから、先に寝てて。ご飯は冷蔵庫にあるから¨」
「どっちに聞いたの?」
「さっきお袋から電話あったんだよ」
「回りくどい事しないで直接言ってよ!」
「普通に言ったらつまんないだろ。こうした方が達成感があっていいだろう?」

学校から帰ってきたらいきなり自分の部屋に呼ばれた。
そして、机の上に¨本棚を探せ¨と書かれたメモがあった。

指示の通りにしたらまたメモを見つけて、そこには¨トイレを探せ¨と書かれていて・・・

後は台所とかベランダだとか、色んな所を捜し回った挙げ句、結局自分の部屋に戻ってきた。
一番最初のメモがあった場所から何センチも離れてない場所に、お母さんからの伝言が記されたメモがあったのだ。

というか、お母さんから聞いた話をお兄ちゃんが口頭で伝えれば済むことなのに・・・

「そうか、明乃には宝探しの楽しさが分からないか。まっ、男のロマンだからな、わかり合うのは難しいよな」

別に今に始まった事じゃないので、今更何かを言うつもりにもならない。
昔からお兄ちゃんはお母さんやお父さんから聞いた事をメモに残し、それを隠した場所を分からなくさせる為の罠を張るのが好きだった。
私も小学生まではその遊びが楽しかったんだけど、中学生になった今では惰性で付き合ってあげている。

それでも、特にお兄ちゃんを避けるという事は無かった。
小学生の時とは違って、いつも一緒にいるなんて事は無いけど、仲は良い。
たまに2人で買い物に行くし、映画を見たりもする。

友達はみんな変だ、なんて言うけど私はそう思ってない。
多少の距離は出来ても私とお兄ちゃんは離れる事は無いのだ。

兄妹はそういうものだって、別に疑問に思う事もなく思っていた−



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