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「負けないで」
【アイドル/芸能人 官能小説】

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「負けないで」-2

アタシよりも遥かに若い『みーたん♪』こと平井琴美。
彼女は元国民的アイドルグループの一員だった。
べらぼうな人数で構成されるこのグループ。
琴美ちゃんはこのグループの一軍にいた訳ではなかったが。
それでも琴美ちゃんのネームバリューは絶大で『みーたん♪よっちゃん♪』の仕事数は劇的に増えた。
琴美ちゃんもそんな先行する人気に溺れる事はなく必死に『みーたん♪』に成り切る努力を惜しまなかった。

そしてライブの会場でも…。
「いやぁぁ最近、犬を飼いましてねぇ」
とアタシ。
「ほうほう!で?どんな犬?」
とみーたん。
「マルチーズですわ…メッチャ可愛いんですよぉ」
「けっ!」
アタシの言葉に惜しげもなく顔を歪めるみーたん。
「なんなのよ!その顔は?」
声を張るアタシ。
「何が…まるでチーズみたいなんですかぁ!ブルーチーズみたい顔して!あなたの場合はまるでバター犬でしょ!」
お約束の顔いじりの後は。
課題だった下ネタに果敢に突っ込んでゆくみーたん。
まぁ…ネタの出来はイマイチだけど。
「アレは時々ねぇ…ガブッてヤラれるから痛い…痛い…ってブルーチーズってどんな顔だよ!」
ってアタシのノリにみーたんは無視を決め込んで髪の毛をいじってる。
「…って!突っ込めよ!」
アタシの変則ノリ突っ込み。
ここでは結構、お客さんが沸いた。
そして…。
「この人ね…近所のスーパーで“バタ子さん”って呼ばれるくらいバター買ってんですよ!お客さん」
ライブのお客さんに向かってニコヤカなみーたん。
この辺もだいぶ上手くなってきた。
「バターばっかり違いますぅ!」
下唇を突き出して殊更、憎々しげな顔を作るアタシ。
「“違いますぅ”って憎らしい顔してホントに!」
アタシの顔を真似るみーたん。
これはかなりみーたんファンには受けてる。
可愛いぃぃぃ!――なんて声まで飛んでる。
この辺は同じ女としてちょっと悔しいけど。
何はともあれみーたん、顔芸も取り敢えずは合格点。
「バター、バタァ、バタ、バタバタ、バターばっか買ってんですよぉ!…この人」
テンポも悪くない。
「バターばっかり違いますうぅ」
更に顔を作るアタシ。
「ばっかですうぅ」
変顔を被せてくるみーたん。
アタシは斜め上を見ながら…。
「バター、バター、きゅうり、バター、ナス、バター…」
「やってんじゃねぇか!」
アタシの肩に突っ込みを入れるみーたん。
遠慮のない、いい突込みだ。
お客さんも沸きっぱなしだ。
そしてフィニッシュ。
「突っ込むんならなあ!」
「突っ込むなら?」
「ここに突っ込んで…」
立ったまま足を広げ腰を前に突き出すアタシ。
「いい加減にしろ…」
的確な裏平手でアタシの下腹部に突っ込みを入れるみーたん。
歓声と笑いが客席を揺らしている。
「「ありがとうございましたぁ」」
一礼して舞台の袖に引っ込んでも客席の歓声は収まらなかった。

「よっちゃんさん!ありがとうございます!」
舞台の袖で深々と頭を下げるみーたん。
どうやら…お客さんが沸いているのはアタシのお陰だと思っているみたい。
そんな事ないよ。
今日、お客さんを沸かせたのはみーたんの頑張りだよ。
そう思いながら…みーたんの背中にそっと触れた。
ん?アタシの中でもいつの間にか琴美ちゃんからみーたんに変わっていた。
受け入れられてきたのかなぁ。
少し嬉しくて…。
そして少し淋しかった。
だから…。
アタシは目一杯の笑みを浮かべると。
「みーたんのお陰だよ…みーたんが頑張ったからだよ」
顔を上げたみーたんの両肩をしっかりと掴んだ。


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