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【純愛 恋愛小説】

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恋愛小説(5)-8



村田さんのプレゼントを買うのに、そう時間はかからなかった。葵ちゃんは事前にリサーチをしていたらしい。そういえば僕と千明と葵ちゃんと村田さんの四人で話していた時、そんなことも言っていたような気がする。木村さんに貰うなら、どんなプレゼントがいい?って言う千明と葵ちゃんの声を思い出して、僕は思わず笑ってしまった。それを覚えていたらこんな面倒なことにもならずにすんだ。まったく人の記憶ってやつは。僕はその事をそれとなく聞き出しそっと木村さんに伝えると、木村さんは手を叩いて喜んだ。よほど困っていたらしい。涙を目に浮かべているようにも見えた。
「助かった!助かったよ水谷!」
「僕は何もしてませんけどね」
「今度何か埋め合わせするよ!」
「……いえ、遠慮しときます」

話もそこここに木村さんは去って行った。なんでも明後日の準備でまだやることがあるのだとか。取り残された僕と葵ちゃんは、予定も無いので街をぶらぶらすることにした。葵ちゃんが嬉しそうにしていた。
「そう言えばひーちゃんとこうやって出かけるのって、はじめてかも知れない」
「かもしれないね。千明と三人で出かける事はあったけどね」
「なんかデートみたい」
「そう?」
「うん。初デート」
近くの繁華街は平日だと言うのに人が多く(大概の繁華街はいつでも人が多いものだけれど)、何十人もが固まって移動した後みたい熱かった。葵ちゃんも厚手の皮ジャケットを脱いで、その手にかけている。小さなリュックサックを背負っていて、その色が眩しい。
「葵ちゃんって、おしゃれだよね」
「本当!?」
「う。そう過剰に反応されると、ちょっとたじろいでしまうけど、本当だよ」
「やった!嬉しい!」
「そのリュックサックは、僕には少し背負えそうにないからね」
「ふふっ。可愛いでしょ?」
ピンクと水色のコントラストが激しいそのリュックは、笑顔がかわいい葵ちゃんの雰囲気に良く似合っていた。ネイビーブルーのトレーナーの下に白いシャツが見える。割と低いヒールのブーツを履いていて、そこから伸びるスラッとした足には黒いタイツが張り付いていた。膝小僧あたりの長さのスカートがそれを向かい入れて、葵ちゃんらしい様子を作り出している。他にもネクタイ、時計、ピアスと様々な小物が自己主張が強すぎない程度に身につけられていて、それをしきりに触る仕草が僕は素敵だと思った。
「でもひーちゃんはぱっとしないねぇ」
「そうかな?」
「うーむ。すっごいかっこいいと、どうしようもなくダサイの間くらいかな?」
「うん。僕にはちょうどいい表現だね」
「おしゃれに興味ないの?」
「どうだろう。あるかもしれないし、ないかもしれない」
僕はTシャツにグレーのジャケット、濃い色をしたジーンズにスニーカーを着用していた。冴えない男の、冴えない服装だってことは想像に容易いと思う。ファッション雑誌とは暫く縁がない。
「じゃあ私がひーちゃんをコーディネートしてあげる」
「ん?うん」
「あれ?乗り気じゃない?」
「そんなことないよ?」
「ん、じゃあ決まり。ひーちゃん、行こ?」

女の子の買い物は凄い。選んで貰っておいてこんなことは言うのはどうかと思うけれど、長いし元気だし疲れる。
「ねぇひーちゃん。こんなのどうかな?ちょっと着てみて?」
「もう冬用の上着は買ったよ」
「一着じゃ足りないよ。ホラ、いいから着てみて?」
それにしても葵ちゃんのセンスは良かった。いまいちぱっとしない(風に見える)服喪も、葵ちゃんの手にかかれば凄くおしゃれに着こなせる。どこからそんな想像力が沸いてくるのだろうと、僕は不思議に思った。この年頃の女の子は、皆こうなのだろうか。


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