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『屋上の青、コンクリートの灰』
【ボーイズ 恋愛小説】

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『屋上の青、コンクリートの灰』-3

 あの石井の勉強友達選抜から2ヶ月が過ぎた。
 僕は少し石井に慣れた。まだちょっと恐いけど、所詮は同じ中学2年生のガキなのだ。
 話してみたら、蓋を開けた中身は僕の友達のモンちゃんとかと案外大して変わらない。
 そんなもんなのだ。狂犬だって懐けば恐くない。

「で、今日はなんて言われたの」
「別に。真面目にやってんなって」
「嘘だろ」
「まあな」

 石井がピースを作る。この一ヶ月の間に、僕は石井と軽口が叩けるまでになっていた。
 今なら軽口に乗ってさらりとあの時の申し出を断ることだってできるかもしれない。
 だけどそれを実行しないのは、石井と居ることに慣れてしまったせいもあるけれど、なにやら石井と居るのが僕にとって、居心地がいいせいでもあった。
 全然ベクトルというか、S極N極のように性格がてんで違う人間と接するというのが、なんだか新鮮で面白いのだ。


「越智」
「ん?」

  感慨にふける俺を置いて、いつの間にか自分のカバンだけを背負った石井がドアの前で僕を呼んだ。

「帰るぞ」

 そう言った石井の髪は、普段の黒みを帯びた髪とは違い、廊下の窓からの西日に照らされて薄茶色に透かされていた。


 こうして見ると、やっぱり石井は目立つ。キラキラと眩しい。
 それは石井の顔立ちや背格好のせいだけじゃなく、石井の存在感によるものなんだ、きっと。
 クラスの女子じゃないけど、格好いい、とつい思う。こんな傍若無人を。でも石井には、その傍若無人振りがよく似合っていた。


「越智、早く来い」


 時にその顔が僕に笑いかける。
 緊張を思い出すのは、こんな、ふとした瞬間だ。





 勉強を教えると言っても、僕だって満足に人に教えれるほどの知力を持っているわけじゃない。失礼な話、石井の学力がみそっかすなら、僕はそのみそっかすにみそがやっとついたようなものだ。
 だから石井とのテスト前の勉強会は、決まって僕も一緒に参考書を見ては頭を悩ませた。
 人生とは苦悩の連続だ。教室で僕たち受験生へのはなむけとしてあてられた、先生の分かった風な言葉がふと思い出された。



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