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『屋上の青、コンクリートの灰』
【ボーイズ 恋愛小説】

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『屋上の青、コンクリートの灰』-13

 石井が勉強できる?そんなはずない。絶対ない。一緒にやってた俺が一番よく知ってる。
 それになんだよ。教わる奴決めてるって。だからなんだと言うんだ。
 ぐるぐる思考だけが回りだす。周りの声も、景色も全然頭に入りはしなかった。


「……さひ」
「朝陽っ」
 ハッと気付く。目の前には、心配そうに僕を呼ぶ伊藤がいた。そうだ俺、委員会で遅くなる伊藤を待ってたんだった。
「ごめん、ちょっとぼーっとしてた……」
 下駄箱の前では他の生徒らが下校しようとしていた。
 俺たちみたいに待ち合わせをしてる生徒もいる。
 帰ろうと自分の靴に手を伸ばした。上部に嫌でも石井の靴箱が目に入る。上履きはない。まだ中にいるのか。 
「……なんか朝陽、最近元気ないね」
 気がそぞろな俺を伊藤の声が戻した。
「そう、かな」
 濁したけれど、実際図星だった。なにをするにも石井のことがちらつく。なんだって俺はこんな石井のことばっかり気にしてるんだろう。
 目の前にいる伊藤より、石井のこと考えてる。
「あたしのせい、だよね……ごめん」
 伊藤の声のトーンが落ちる。
 石井とのことを言ってるのが分かった。
「そんなことない」
 馬鹿だ俺。 
「そんなこと、絶対にない」
 これは自分の問題なのだ。
 伊藤に心配させて、落ち込ませて、なにやってんだ僕は。
「ごめんな、伊藤。ごめん……」
「朝陽……」
「……ごめん」





「……こんなとこにいた」


 
 珍しく閉め忘れたのか、ドアは開いていた。
 屋上のドアのすぐ真下。石井はそこにいた。歩み寄り座っている石井の隣に立つ。

 なにも言わなかった。石井も、僕も。
 明るかった陽が落ちながら赤みを帯び、いったい何十分過ぎたのか感覚もなくなった頃、石井がポソリと呟いた。

「悪かったな」
 空気に馴染むような声だった。久しぶりに聞く、石井の声。それを聞けたことに安堵した。
「……伊藤に、ムカついた。あん時の元谷にもムカついた」
 あの時というのはたぶん3年前のことだ。
 動かさずにいた石井の表情が、ここでわずかに歪む。
「馬鹿みてえ……。伊藤がおまえのこと朝陽って呼ぶのも、おまえが元谷の方を優先するのにも、すごいムカついたんだよ。おまえのことになると、いつも腹立ってばかりだ。…………馬鹿みてえ」
「ほんと、馬鹿だよ」

 まったく、この男は。

 僕はいつもそうしていたように石井の隣に腰をおろした。


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