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月夜と狼
【幼馴染 恋愛小説】

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月夜と狼-6

しばらくしたら、咲夜が出てきた。
とぼとぼと来た道を帰っていく。

俺は距離をあけて付いて歩いた。

咲夜はさっき俺を追い抜いていった川の土手で腰を下ろした。

こんなとこで休むなよ。

俺はゆっくりと咲夜に近づいた。
俺に気が付いたら、川村と同じく走って家まで帰るだろう。

視界に入ったらしい。咲夜の身体がぴくりと揺れた。

「んー。君、おっきいね。ハスキーかな?狼みたい」

咲夜は少し引きつった顔で俺をみて立ち上がった。
そうそう、帰れ帰れ。

「噛む?噛む?」
――噛まねえよ。

俺は咲夜から視線をはずした。お前に噛みつく趣味はねえよ。

どういうわけか咲夜はまた腰をおろした。
自分の横の地面をパンパンと叩いて

「おいで」

と笑った。

その顔が可愛くて、不覚にも俺はどきりとしてしまった。
おとなしく言われるまま、咲夜のとなりに寝そべった。

「ふふ、イイコだね。わ。ちょっとかたいけどふかふかねー。綺麗な毛並み。かぁーっこいー」

俺の頭をなでてまた笑った。

なんだろ。
すごくいい匂い。シャンプー?
いつもはわからないのに。

「オスみたいだし、もっと凶暴かと思っちゃった」
――おいコラ。ナニ見てんだよ。

「首輪もないし、君みたいな大きな目立つコは隠れてないと保健所呼ばれちゃうよ」
――そうだな。

「もういいや。知らない」

咲夜はそういうと抱えてたカバンを開けてリボンが付いた赤い包みを取り出した。

「食べる?チョコ。……肉とかの方が好きそうだけど」

咲夜はリボンをはずすと豪快にビリビリと包みを破いた。
お前、そういうとこガサツ。

取り出したハートをパキンと割ると俺の口元に持ってきた。

俺は口を開けてソレを食った。
味覚はちゃんと記憶してるチョコの味だった。
犬になったからって不味く感じたりしないのか。

「おいしい?」

畜生、反則だ。なんでこんなに可愛く笑うんだ?
俺の美的感覚が犬並みになってきてるのか?

「アイツ。バカだよね。裕美が自分を見てる気がするって。アイツの隣の中島くん見てただけなのに」
――アイツって俺?ってことは川村の好きなのは中島ぁ?

「裕美はさ、アイツの目が怖いんだって。アイツはね、目の色が薄くて飴色してるの。おじさんも、おばさんも普通なのにね」
――怖いぃ?
不可抗力だ…。


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