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やさぐれ娘は屋上で笑う
【学園物 恋愛小説】

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#02  研修旅行――初日-14

――カチッ!

「…………。ふぅ、ぱぁ〜っ」



私は口に馴染んだ紫煙を胸に溜め、大きく吐き出した。

浮かび上がるその煙を目で追うと、日が沈み群青色の空に煌々と照る月光へ溶けていった。儚い、ヒトの夢で儚い――。

……、……。ダメだな、うん。私にはこういう情緒だの、風情だのってのはほとほと似合わねぇ。

いま、私は研修旅行の拠点となるホテル『星月夜』の別館の屋上に上がってきていた。

七階建ての別館の五階から上を鐘状高校で貸しきっているため、さらに一つ上の階の屋上に来ても、特に誰の目にも止まりはしなかったようだ。

ついでに私は部屋まで林田、相原と同室になっていたんだけども……、

なんだ、アレ?新手の拷問か?

というのも、現地――鎌倉までの車内での会話を延々と引きずっているのだ、ふたり共。

まあ、重症なのは自分の精神的な支柱を粉々に砕かれた林田だな。いつもの「ばかどもが!せんせいにいいつけるんだからっ!」みたいな覇気が皆無だった。

相原は行きの車中とは反対に、なんとかそんな友人の気持ちを盛り上げようと、口数がないなりにも必死に話しかけていた。岐島との会話で肩の荷が下りたようで、いままでにない良い表情を浮かべていたが……林田に復活はまだ遠いようだ。

その居たたまれない空気に私は抜け出してきたのである。ついでに一服。

だって、あれからずっとだぞ!?サービスエリアでの休憩、昼食、到着後の鎌倉五山だかなんだかの寺での座禅、その後のホテルでの夕食、風呂――ずっとだ!

私にしては頑張った方だと思う。

そう、自身を称賛しながら、二本目のタバコに火を点けたときだった。



ガチャ!



と、屋上の通用扉が開かれた。あの、よくある銀色の回すタイプのノブのヤツだ。

私は闖入者にそなえ、室外機の陰で背をもたれかけて座っていたから相手が誰か確認できない。

もちろん、相手も屋上に先客がいることすら知らないだろう。

けれど、スリッパ特有の間の抜けた足音は私のいる方へと次第に近付いてくる。歩速からして、私の存在に気付いた訳ではないだろうが、このままでは見つかるのは必至だろう。

見つかれば、当然ながら大ごとだ。私はあわててタバコを携帯灰皿に押し付け、もみ消して収納するとソレも傍に置いておいたカバンに投げるように仕舞う。

その作業(というか証拠隠滅)を終えた次の瞬間、業務用の巨大な室外機の端からヌッと大きな人影が髪をなびかせて顔を覗かせた。

……こんな形容表現が似合う人間はおそらく、このホテルにはひとりしかいないだろう。




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