投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

缶コーヒー1つ分の話
【その他 その他小説】

缶コーヒー1つ分の話の最初へ 缶コーヒー1つ分の話 0 缶コーヒー1つ分の話 2 缶コーヒー1つ分の話の最後へ

缶コーヒー1つ分の話-1

「なんだよ」
「なんだろねえ」

昼下がり。
目の前には海と空、足許にはテトラポッド。
河口は暑くもなけりゃ寒くもない。
涼ちゃんに呼び出された。

「呼び出す相手が違うだろ」
「たまには圭ちゃんと会おうかなって。てへ」
「……。気持ち悪い」

なんで野郎2人並んで座ってるのかさっぱりわからない。
藤川涼。僕の幼なじみで、今は姉貴の恋人。
買ってもらった缶コーヒーを一口飲んだ。
まあ、いいんだけどさ。

「姉貴は?」
「んーと、お友達と久々に会うんだってさ」
「あ、そう」

会話が繋がらない。
それでも、コイツとは気まずいってことはないから、これも、まあ、いいんだけどさ。

「なんだよ、僕に用じゃないのか」
「うーん。用ねえ。あるようなないような」

なんていうか、歯切れが悪い。

「…結婚。すんのか?」
「ええ?ああ、まあ、そうなんだよね。美佳ちゃんにきいた?」
「いや。きいてないよ。…なんだよ、そうか。…おめでとう」

涼ちゃんはあわてた風にこちらを向いた。
そんなこっちゃないかとは思ったんだ。

「あ、ありがと。ていうか、反対しないの?」

なにいってんだ、コイツ。

「反対するぐらいなら、初めっから手を貸したりしないよ。反対しないとなんかマズイのか?出来ちゃった?」
「ないない。その手が使えたらもっと早く、強行に結婚してたかな。あれ、なにいってんだろ俺」

涼ちゃんが手を振りながら答えた。
少し照れているらしい。
こういうアケスケなとこがコイツの良いとこなんだと思う。
警戒心なくいつの間にか懐に入り込んでしまっている。
莫迦の可愛げ?

小学生の頃に転校していった涼ちゃんに再会して、姉貴に繋いだのは僕だ。
コイツがしつこく聞いてきたからでもあるけど。

「正直いうとな、オマエ、姉貴にフラれると思ってた」
「えー。なんでよ、なんでー」
「あんなでも、本当は甘えたいんじゃないかなあと思ってたから。ずっと年上の男を選ぶんじゃないかなあと、ね?」
「ふうん…って、あんなでもってなんだよ」
「所謂姉御肌。」
「あ。なーる。でも、ま。持ちつ持たれつよ。美佳ちゃんだって凹むときもあんだよ」
「まあね」

それを見せたがらないのが姉貴の性分だ。特に下位のものには。
だから、それを自然と解放できるとすれば、それこそダブルスコアな男を連れてきても不思議じゃなかった。

それがねえ。
なんだか笑ってしまう。

「僕も母さんも涼ちゃんのことは知ってるから安心してる。そういや、母さんには?」
「まだ。美佳ちゃんが話してるかもしんないけど。来週ぐらいに正式に話に行こうって思ってる」
「うちはいいんだよ。お前は全然問題ない。寧ろ、姉貴の方が…問題あんじゃないか」

そう、ウチは母子家庭だ。
それも、姉貴は私生児。
さらにスナックで働いてるって。
普通なら絶対反対されると思う。


缶コーヒー1つ分の話の最初へ 缶コーヒー1つ分の話 0 缶コーヒー1つ分の話 2 缶コーヒー1つ分の話の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前