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ワルグチ
【学園物 恋愛小説】

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ワルグチ-2

「怖い・・・」


誰かの声がして、振り返るとそこに女子生徒が立っていた。
黒髪を後ろに結んだポニーテールのジャージ姿で、こちらを怪訝そうに見ている。

「ねえ陸先生、誰と話してたの。近々お墓に埋めるつもり?」
「別に、只の腐れ縁だ。それよりお前はここで何してる」
「陸先生が来ないから呼びに来たんだよ。キャプテンに言われて・・・」

そうだった。一瞬とはいえ感情的になったせいで大事な仕事を忘れてた。
早く行かないとまた皆に怒られちまうからな。
あの馬鹿野郎、よりにもよって部活の前にかけてきやがって。こりゃあ、冗談抜きでそろそろ締めあげてやらんと・・・

「悪いな、すぐ行くから」
「授業中は私用電話するなってうっさいくせに、自分は職権濫用ですか。いいですねぇ教師って職業は」

海東海雨(かいどうみう)

俺の受け持つ2年C組の生徒で、陸上部の部員でもある。
海東にすれば俺は担任であり、そして顧問でもあるので普段から気兼ね無く話し掛けてくるのだ。

名字の林田と呼べと言ってるのにしつこく名前で呼ぶから、遂にもうそれでいいよとこちらから折れた。

「ねえねえ先生、今の会話みんなにちくってもいい?」
「勝手にしろ。どうせ相手にしないよ」
「いやいやどん引きっしょ。顧問が電話で、お前の命日がどうとか、次会ったら最期とかさー」

冗談っぽく海東は言った。
だが、言ってることは一理あると思う。
教師という立場の人間がそんな言葉を口にする、それを生徒が聞いたらいい気持ちでは無いだろうな。
俺はまだまだ教師としては未熟らしい。もっと精進せねば。

・・・日比野よりはましだがな。
あいつは交際相手がまだ十代、しかもマネージャーでありながら自社の商品に手を出すというダブルリーチだ。

「まあ、色々あるんだよ。お前も大人になりゃ分かるさ、世の中は好きな相手とだけ付き合える訳じゃ無いってな」
「海と同じくらいお説教は嫌いだもん」

海東は、名字と名前に入ってるくせに海が嫌いらしい。
会って間もない時に自分から言ってきたから、妙に記憶に残っている。



「・・・ねえ、大丈夫?」



並んで歩いていた海東が足を止めて、俺をじっと見つめてくる。
二言目には俺の悪口ばかりのこいつから笑顔が急に消えた。

「大丈夫って、何がだ」
「だってさっきの陸先生、辛そうな顔してたから」

辛そうだって?
苦虫を噛み潰した様な顔、とかなら分かるが、あいつを相手に辛そうな顔をするのはちょっと違うだろう。

「気にするな、海東には関係無いんだ。お前が気に病むことは無いんだぞ」
「ん、そ・・・そうだね。ごめん、変な顔だったからおかしくって」

心配してるのかと思ったが、単なる思い過ごしだったらしい。
海東はぱあっと明るい表情になりその場から走りだした。


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