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ワルグチ
【学園物 恋愛小説】

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ワルグチ-1

「それで?お前の願いはなんだ。今日を命日にでもしてほしいのか?」

だらだらと惚気話を続ける阿呆を何とか一時停止させた。
奥歯を噛み締めながら返事を待っていると、受話器の向こうから聞こえる声が、より一層うざさを増した。

『やなこった、明後日はデートなんだぜ。自分だけの命じゃないんだからな、栞菜を悲しませる様な事はしたくないんだ』

当て付けか、と思ったが違うだろう。
わざわざふられた事をこいつには伝えてないので、いつもと同じ感覚で電話してきたと思う。

もう電話してくんなと何度も言ってるが、こいつは俺の警告をものともしていない。

なんで出ちまったんだろう。
やっぱ、まだ心にダメージが残ってんのかな。

「いいか、次にてめえの顔を見た時が最期だぞ」
『怖いねー、教師が暴行予告してる。まあ聞けよ。それでさ、前祝いに今晩呑もうぜ』

それを言うためだけに惚気話を延々と・・・前置きが長すぎる。
大学の時からこうだ、一方的に自分の事しか話さない。
飲みの時は自分から誘った挙げ句びた一文払おうともしない、典型的な末っ子野郎だ。
あまりの身勝手さに我慢出来ず喧嘩になった事は数えきれなかった。
もう途中から怒るのも面倒になって、聞き流すという事を覚えたんだっけ。

「こっちは仕事中なんだよ」
『こっちだって仕事ちゅ・・・いたた、立花さん耳はやめ、いたたた』

急に通話が途絶えたがもう話すつもりも無いので、携帯を机に置いた。
多分また上司に見つかったんだろう。以前も同じ事があったので、察しはついた。

「はあ・・・不公平だよなぁ。何であんなだらしねえいい加減な奴が幸せなんだよ」

あいつがアクセサリーみたいに異性をとっかえひっかえしてる間、俺は一途に愛を育んでたっつうのに。
大学2年からずっと付き合ってたから、決して短くは無い。


(ごめん、なんかね、もう疲れたの。ほら陸っていつもさ、気遣ってくれるじゃない。それがさ、もうね、辛いのよ)


普段と変わらない口調でそう言い残し、俺の家から出ていった。
翌日から電話は繋がらず、アドレスも変わっていた。

これは、なんなんだ?
俺は恋人の為に尽くしてきたつもりだったのに、あっさり別れを切り出された。
日比野は好き勝手なくず野郎のくせして、担当してるアイドルと交際は順調−

これじゃあアリとキリギリスの逆じゃないか!!

とにかく、俺の教え子達の今後の人生には、日比野みたいな人間が現れない事を祈るしかない。
男子生徒は日比野の様にならないで欲しいし、女子生徒はああいう輩と交際するのだけはやめてほしいもんだ。
ただそれを切に願う。



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